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A むずかしい問題です。結局は情を取るか理を取るかの選択になるでしょうね。

公証役場で扱った中に、こんなケースがありました。

「夫が死亡し、妻と三人の子が残され、遺産分割協議の結果、住居と敷地は妻の澄江さん(七〇歳、仮名)が相続した。その後、澄江さんはこれを全部長男に贈与した。そうしておいてくれないと、ほかの二人が母亡きあと相続権を主張してもめることになるので、安心して母の面倒を見られないという長男の強い希望による。いわば扶養の見返りというわけである。しかし、贈与の登記が済んで三年目、長男が交通事故で死亡し、前から折り合いの悪かった長男の嫁は、孫を連れて出て行ってしまった。この住居と敷地は、法定相続で嫁と孫が相続し、嫁からいつ出て行ってくれと言われるか、戦々恐々の毎日である」

人生、いつ何が起こるかわかりません。予想もしないことが起こります。お尋ねの問題については、おそらく二つの選択肢があるでしょう。

一つめは、先のことは先のことだと達観し、息子の言う通りにしてやることです。

二つめは、断固として拒否することです。「私は、お前のお父さんが残してくれたこの家で死にたいのです。死んだら全部あなたのものです。それまで待っていてね」

自分の老後は自分で守る時代になっています。後者が正解のようです。

 

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