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当世高齢事情 No.8

 

社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか ?

 

乱れる心

回答者 清水勇男

蒲田公証役場・公証人

 

Q 数年前に夫が亡くなり、工場と敷地は、一人っ子の息子が、住まいの家屋と土地は私が相続しました。この家屋で息子夫婦と同居しています。まもなく七三歳になりますが、好きな折り紙を折ったり、時には幼稚園や公民館に教えに行ったりして、元気に過ごしています。ただ、この不況で、息子は夫から引き継いだ工場の経営が思わしくなく、資金繰りに四苦八苦していて、工場も敷地も抵当に入っているようです。これまでにも、たびたびこの家屋と土地を抵当に入れさせてくれと息子から懇願されましたが、借金が払えなくなったときのことを考えると、怖くてとても承知できませんでした。ところが、つい最近、この家屋と土地は一億円で売れるので、五千万円でマンションを買って引っ越し、あとの五千万円を、工場の運転資金に回してくれないかと言い出しました。私は、今さらマンションに引っ越したくありません。しかし、息子が苦しんでいるのに、それもいやだとは言いにくく、買ったマンションだけは自分の財産として残るのだし、住まいの家屋と敷地を抵当に入れて借金が払えず全部取られてしまうよりはましかと考え、また、今は元気でもいずれは息子夫婦の世話になるのだから、ここは息子の言うようにしてやろうかと思うようになりました。しかし不安が残ります。どうしたものでしょうか。

 

 

 

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