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「しかしそう簡単に近所の人が協力してくれるんですか?」と、わざと疑い深い言い方をしてみたら、「木原さん、こっちから頼めば、みなさんちゃんと応えてくれるものなんですよ」。正直に言ってまだ半信半疑なのですが、もしこれが本当だとしたら、これはめっけものです。「近隣起こし」の重要な一手段になりそうです。

栃木県足尾町でお年寄り同士が助け合っていることも本シリーズで紹介済みですが、そこでも確かに地区ごとにそんな「やらせ屋」さんがいました。たとえば、自身七〇の半ばにもなるNさんは、近くの九〇歳の一人暮しのAさんのお世話をしています。先日、一緒にAさん宅を訪問した時、帰り道で「ちょっと待って」と私を道路に置き去りにしたままNさんは、Aさんの近隣宅を一軒一軒訪問し、「悪いけど、Aさんのこと、お願いね」と頼んで歩くじゃありませんか。Aさん宅を訪れるたびに、こうやっているのです。

地域は、それぞれが生まれながらにして持っている、まさに「天性の腕」を生かし、役割分担することで成り立っているようで、私が見つけただけでも十数種類の「役割」があります。「天性の腕」となれば、それを備えた人をうまく掘り起こし活用する以外にないわけですが、よくしたもで、どの地域に行っても何人かの「やらせ屋」さんを見いだすことができます。地域の活動家をそっくり動かす、ディレクターみたいな人と、自分のかかわる人の周辺の人をこまめに活用する人とがあるようですが、いずれにしても近隣助け合いにこの人材は欠かせません。

 

近隣型助け合いとは…?

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

 

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