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介護保険によって介護は産業となる。営利、非営利の事業体が共に参入しサービスの質と量を競い合う時代が目前に追っている。登米郡に隣接する栗原郡では(株)コムスンが、やはり過疎地の在宅サービスを行政から委託されて実施しており、根っこが同じ介護会社同士が競合することになる。

新会社の売上目標は初年度が六億円、介護保険が開始する二〇〇〇年度は二〇億円だという。資本と経営を分離して機動的に事業を展開する株式会社の設立は“福祉ビッグバン”への生き残り策だ。

ただ、関係者の反応は複雑。米山町は町長が株式会社化を推したものの議会が反対して出資を見送った。また「出資者は必ずしも会社設立に賛成した人ばかりではない」(宮城県迫福祉事務所)といわれ、「会社が突っ走ってサービス低下や労務管理の行き過ぎを招かぬようブレーキをかけるために出資した」と打ち明ける住民株主も。宮城県の担当者は「埼玉県の彩グループ事件の後遺症かな……」(介護保険対策室)と苦笑する。

地域社会の崩壊を食い止めねば! そんな気概にあふれた過疎地の町長。限りなく地域に貢献するコミューン型企業を作りたいと過疎地でも成り立つ介護事業の開発を目指す起業家。両者の出会いからはじまった「登米」のチャレンジは、全国から注目され、多い日には六〇人もの視察者が訪れるという。

株式会社の機動性と公共的な性格をどう両立させるか。後者を意識し過ぎると、角を矯めて牛を殺す恐れもある。町長たちが“切り札"を切ってからまだ数か月。決断の成果が見えてくるのは介護保険がはじまる来年四月以降だ。

 

(表2)登米地域の高齢化現状(1998年度)

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