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域内各町の人口規模は迫町など三町を除けば一万人未満。一町では採算規模に達しないが、地域全体なら九万六〇〇〇人で事業が可能になる。社協のヘルパーをいったん解雇して新会社が採用、再教育をし年功賃金を能力給に切り替えるという改革に踏み切った。

榎本氏は日本で初めて二四時間巡回型介護サービスを事業化した介護産業のパイオニアだ。今年七〇歳。介護事業の全国展開は若い折口雅博社長に譲って会長に退き、残りの人生を過疎地における二四時間介護サービスの事業化に賭けている。すでに宮城県のモデル事業に指定された登米町の二四時間介護サービスを指導している。これを登米地域全体に広げ過疎地の広域介護事業のノウハウを確立し、ゆくゆくはこの地に介護大学を創る夢を描いている。「全国には三二〇〇の市町村があるが、そのうち人口一万以下の町村が半数を占める。そうした小さな町村を支える介護事業を開発したい」が口癖。このため福岡から宮城に引っ越してきた。

新会社は「限りなく公的性格を持つが、経営面では保険財政での自己完結的組織」。たとえば「当面、配当はせず、その分の利益は利用者の一割負担をなくすとか、生活支援サービスに使うなど社会還元に回したい。二一世紀の企業は公共性が必要です。そんな志を持って住民が望む介護サービスを提供したい」(榎本社長)。「自己完結的」とは原則として介護保険からの介護報酬だけで採算に乗せるということだ。「会社の経営に対して各自治体や設立にご支援いただいた方々に、今後一切の経済的負担をおかけいたしません」(榎本社長)と“宣言"するのは、「人事など経営の中枢には口出ししないでほしい。そうしないと第三セクターのような無責任経営になる」という意思表示である。

 

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24時間介護サービスを担当するケアマネージャーと巡回車。

 

 

 

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