最後まで人間としての尊厳を失わずに生活していくには、在宅しかない !
六年間、特別養護老人ホームで調理師として働いてきた内藤さんが在宅に目を向けたのは、次第に管理的こなっていくケアに嫌気がさし、施設介護に対する限界を感じたことがきっかけ。「私のいた特養は八八床ほどの規模だったんですが、ご多分に漏れず、人手が足りませんでね。大体、三・五人から四人のケアワーカーで、デイサービスの利用者も含めて一〇〇人以上のお年寄りをみるという状況でした。そうなると、とても手が回りませんでしょ。労力を省くために、せっかく私たちが一品、一品心を込めて作った食事も、薬も、全部混ぜこぜにして食べさせてしまうんです。そこには、人間の尊厳を重んじる姿勢など、微塵もありませんでした」
中でも、内藤さんが大きなショックを受けたのは、元気で、自分の足で歩いて入所してきたある男性が、一か月も経たないうちにひどい痴呆となり、寝たきりになってしまったこと。黒々していた髪も真っ白になってしまったという。「施設というのは、どうしても管理や運営が優先されてしまいますから、一人ひとりのお年寄りの思いは二の次。やはり、生きがいを持って、最後まで人間としての尊厳を失わず生活していくには、在宅しかないと思い知らされました」
そして在宅の生活を支えるために自分のできることをやろうと、施設を辞めて、ホームヘルパー二級を取得。市のヘルパーとして再出発をするが、画一的な公的サービスでは、「利用者のニーズに応えられない」と、歯がゆい思いをすることがたびたびだった。
「たとえば、車イスで桜が見に行きたいと言われる。私も連れて行ってあげたい。