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老人施設について

鈴木百合子さん 58歳 北海道

友人のお父様は3年前から老人施設で生活しておられる。部屋(個室)は自分の安息の場であるのは認めているようだ。先日外泊された折、遊びに来るよう誘われ、友人宅へ伺った。一緒にお食事し、お酒を楽しんだ。お父様はよく歌いよくおしゃべりをされ、時の流れを楽しんでいる様子だった。翌日施設に帰られる時もご一緒した。

車から下りると、まずひと言。「じゅうたんの上は歩きにくいんだ」。じゅうたんを避けて、ゆっくりゆっくり歩く。老いの日が目前であるとの自覚はあっても、実際に自分がその立場にならなければ理解できないことが多いのを知った。足の運びが自由ではなくなると、わずか1センチの段差が大変のようだ。増して、見た目にはよいがじゅうたんはすべりが悪く、歩行が困難になるようだ。自分の部屋へは最短距離を選択する。

「はい。ただいま」。誰もいない部屋に向かいあいさつをされる。「ここが私の家なのだ」と、ほっとされた様子だった。ただし、次の言葉が胸に響いた。「ここは寂しい所なんだ」。

 

 

 

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