A 世の中には、自分たちの身に迫っている問題の本質がわからず、相手の苛立つ気持ちが理解できない鈍感な人々が多いものです。鈍感なだけではなく、死に神は自分のところだけは避けて通る、やって来るにしてもずっと遠い先のことだと思っている超楽観的な人々も少なくありません。あなたのご主人も、たぶんその中の一人なのでしょう。
この問題は、正攻法できちんと話し合い、遺言を書いておいてくださいというのが一番いい方法だと思います。しかし、テレビを見てから半年以上にもなるのに言い出せないでいるというのは、余程のことだとお察しします。一つだけ秘策をお教えしましよう。
あなたが体調を崩して寝込んだときがいいでしょう。仮病でも構いません。あなたのへそくり五〇〇万円を自分が死んだら全部ご主人に譲ります、という自筆の遺言書を書いてご主人に見せなさい。そのとき、「もしこの遺言書がないと四分の一は私の妹のものになってしまうのよ」とよく説明してやりなさい。「わかった、それではオレも書くよ」と言ったらしめたものです。ああそうかと黙って受け取るような鈍感なご主人だったら「私、去らせていただきます」とキッパリ言いなさい。お気の毒ですが、見込みなしです。
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