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一人娘なので大事な話をする時は、通訳を頼むようになった」という。その娘が、1か月に1度子供と一緒に面会に来てくれて、セーターやブラウスなどお土産に持って来てくれるという。

Kさんの夫は81歳、3日に1度はホームにKさんを訪ねていた。ところが最近、言動がおかしいということに気が付いたホームの職員が心配し、Kさんと相談して、ケースワーカーに頼んで一人暮らしをしているKさんの夫の様子を見るよう連絡した。

早速、自宅を訪ねたケースワーカーによると、Kさんの夫は、一人で暮らすのはもう無理だということだった。それからKさん、Kさんの娘(通訳をつけて)、ケースワーカーの間で数回話し合いが続けられた結果、Kさんの夫は、老人保健施設に入った方が一番いいということになりその手続きがはじめられたのである。

Kさんは、ホッとしたが気持ちは沈んでいくばかりであった。夫とはもう、ほとんど会えないだろうということやお互いの様子がわからなくなるだろうということで、これでは夫婦が他人のようにばらばらになってしまうという淋しさと悲しさで落ち込んでしまっているのである。

障害の程度で入居条件が決まってしまう制度が、長く支え合って生きてきた夫婦の大切な絆に壁を作ってしまっているということである。

 

 

 

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