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男にとって生涯の友情は成り立つのか !?

 

定年後、「濡れ落ち葉」と疎まれる男たちと違って、どうも世の中では「元気印」の女性たちの声が大きいようである。

男たちが企業戦士という鎧かぶとに身を包み、家庭を省みず日夜働いている留守の間に、女性たちは仲間のネットワークをどんどん広げてしまった。男たちは一歩仕事を離れると、意外と人付き合いがニガ手だ。自分一人で何でもできると思っている人を「ローン・ウルフ」と呼ぶそうだが、定年後の男たちはこの「孤独な狼」になる傾向が強い。

心理学者の高橋恵子さんと波多野誼余夫さんの共著『生涯発達の心理学』(岩波新書)の中で紹介されている「愛情のネットワーク」という人間関係のとらえ方がある。

人は一人では生きられない。家族や友人を愛し、また誰かに必要とされ、多くの人と心を通わせ合い、支え、支えられることで生きていける。心理学者はこのような「いく人かの親しい人からなる関係のまとまり」を『愛情のネットワーク』と呼んでいる。

三重の円の中心に、自分がいる。一番内側の円は最も好きで大切にしている人。外になるほど関係は希薄になるが、自分の回りの親しい人々がこのネットワークに入る(P15参照)。

愛情のネットワークの中身は、年齢や生活条件で変化し、修正される。ネットワークといえば、男たちもビジネスの必要から「仕事のネットワーク」をつくり上げてきた。責任や会社でのポストが上がるごとに、どんどん膨らむ。しかし、一端仕事を離れると、ネットワークは必然的に小さくなり、ここにもう一つ別の「愛情のネットワーク」の必要が浮かんでくる。今自分が持っている人的ネットワークが果たしてこの「愛情のネットワーク」足りうるのか ?

特に男にとっては複雑な問いかけだ。

 

 

 

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