日本財団 図書館


若い企業戦士たちの愛情ネットワーク

 

まずは、今、第一線で活躍している若手ビジネスマンが、仕事関係以外のネットワークをどんなふうに考えているか、実際のところを何人かにインタビューしてみた。

太田敏之さん(三一歳)は、東大経済学部から東京海上火災保険というエリート・サラリーマンコースを歩んでいる人だ。

「大学時代に陸上部にいたので、同期の仲間とは、今でも月一回、定期的に会っています。結婚している人間は奥さんも連れて来ます。クラブの仲間と集まっていると、一瞬昔に戻れるという感じがしますね」

そこでは自分をすべてさらけ出せる。会社の人間ではこうはいかない。今太田さんは社員寮にいるが、八○人いる寮でのかかわりは希薄。隣の人間の顔も知らない。時間帯が違うので、あまり話す機会もないという。しかし、太田さんは「同期の仲間とは、損得がらみで付き合っていないので、相手に自分から助けを求める気持ちはありません」と、支援を求める対象とは考えていない。「本当に困ったときは助けてくれるとは思いますが」と、今は、いわば楽しさを共有し合える仲間といった位置付けだ。

結婚一年目、セイコーで商品企画を担当する入社七年目の加納慶彦さん(二九歳)は、「すぐに頭に浮かぶのは、私の場合は幼なじみなんですね」と、自分が考える愛情ネットワークを話してくれた。

加納さんは、両親がカトリックだったため、小学生の頃から東京四谷にあるイグナチオ教会で土・日曜に開かれる教会学校に通っていた。そこで知り合った仲間は、中・高・大学の友だちとは違って職業も経歴もさまざま。しかし、今でも加納さんにとっては大切な仲間たちだ。

「教会ではボランティアなども遊び感覚でやっていました。少年院を訪問してサッカーをやったり。土日だけしか会わない関係だったけれど、この幼い時の仲間が今も一番頼れる存在だと思いますね」と加納さん。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION