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高齢者の尊厳を守るために何ができるかを考えたのが出発点だった

 

現役の保健婦としても活躍中の麻野さんは、八年ほど前の一時期、特別養護老人ホームに勤務。本人いわく「困っている人がいると放っておけない、おせっかいな性格」から、それまでも仕事の合間を縫って個人的なボランティア活動を行っていたが、ここでの体験がひとつの大きなきっかけとなって、団体設立に踏み切ったという。

「そのころの特養の実態は、今と違って閉鎖的でしてね。ホームの中では見方によっては老人虐待とも取れるような処遇が行われていましたし、なぜか医療の決定は本人や家族ではなく医師側にあるという通念もありました。そして、終末には相変わらず儀式的ともいえる延命治療。おびただしい数の管が挿管され、全身に水がたまっても血管からは容赦なく輸液が入っていく……。それは人間らしいケアとは程遠いものでした。こうした悲惨な光景を目の当たりにするにつれ、"これでは何のために今まで生きてきたのか、このままで果たしていいのだろうか"という疑問と憤りがフツフツとわいてきましてね。当時、お年寄りの尊厳を守るために、施設関係者にもずい分、問いかけをしたんですが、いかんせん、何の力もない一人の保健婦にできることには限界がある。一体、どうしたらいいものかと悩みました。そんな時に、同じ悩みを抱えていた人たちから、"勉強会を開きましょう"と言われましてね。それで、会をつくることにしたんです」

こうして入所者の家族や職場の仲間など七名が集まり、『さわやか徳島』の前身となるメンタル・フレンド『あじさいの会』を発足させたのが一九九五年七月のこと。

 

 

 

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