日本財団 図書館


喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記

 

社会参加の場を提供しいくつになっても尊厳を持って生きられる社会をつくりたい

メンタル・フレンド『さわやか徳島』(徳島県)

 

「毎月一回、事務所でもある自宅を開放してデイサービスを行っているんですが、先日、痴呆症のSさんという九〇歳の女性が初参加されたんですね。その日は、ひな祭りも近いということで、みんなでひな人形づくりを楽しんだのですが、Sさんはあまり興味も示さず、おやつや食事以外は同じ話をくり返すばかり。やがて、終わりの時間も近くなり、いつもの"今日のひと言"がはじまりました。これは参加者一人ひとりが近況報告などをすることで発言できる場を設けようというものなんですが、Sさんの順番になったところで、話はとても無理だと思ったのでしょう。一緒に参加していた娘さんが、北原白秋の"この道"を歌うようにすすめたんです。すると、それはそれはきれいな声で、歌詞も間違えずに最後まで歌ってくれましてね。少女のような表情と娘さんとの合唱に、参加者全員、胸が熱くなる思いでした。そして唄い終わったSさんは"あんたたちがこんなに喜んでくれるのであれば、いつでも歌ってさしあげますよ。たびたび、みんなで集まりましょう"と少し上気しながらもはっきりとした口調で言ったんです。先ほどまでとはまるで別人のようで、本当に驚きました。恐らく、みんなに感動をプレゼントしたことで、Sさんは自分が誰かの役に立っているという喜びを実感し、こうした発言をされたのでしょう。この一件は、参加者それぞれが支援し、また支援されたことでお互いに満足し、それによってボランティア活動の目的である、やさしく豊かなコミュニティーがつくられていくことを、私たちに実感させてくれました」

 

こう語るのは、在宅支援介護を行うボランティアグループ『さわやか徳島』の発起人である麻野信子さん。

 

029-1.gif

『さわやか徳島』勉強会風景

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION