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第6章 電波障害の防止

 

電波障害とは、電波がエネルギーの形で他の正常な動作を破壊する現象といい表すことができる。船舶で起こりうる電波障害には、高電力電磁界の中に直接人体あるいは他の生物体が置かれたときに、生ずる生化学的な作用と電磁波による電子機器の誤動作等があるが、機器の電磁適合性については各機器の性能基準として規格化されているので、ここでは生化学的障害とその予防法について述べる。

 

6.1 電波障害とは(原因と症状)

レーダー等の放射電波が空間に作る電磁界中に生物体があるとき、生物体は電磁エネルギーの一部を吸収してそれが体内で熱となり、そのために現れる有害な影響が電波障害と呼ばれる。

最近のレーダーは大出力化し、特に高利得空中線が使用されるため、この放射電波をアンテナ付近で正面から受けると電波障害を起こす可能性が増加している。マイクロ波にさらされた人体がそのエネルギーを吸収して起こす温度上昇の度合は、照射密度、照射時間及び周波数並びに人体の部位、面積、その熱の発散の能力、皮膚及び皮下組織の厚さに関係し、これらの条件により体内に吸収されるエネルギーの割合が変化する。

ごく普通の環境において人体の一部がマイクロ波エネルギーに照射されたあと、人体は、その温度調整機能により血液が照射部分の熱を運び他の部分の体表より発散して、体温を一定に保つことができる。しかしながら、体温調節機能を上回るマイクロ波エネルギーの吸収が起これば、体温は時間と共に上昇し、最悪の場合には部分的な組織破壊を起こすことになる。特に、血液循環の貧弱な部分がマイクロ波にさらされたときの温度上昇は他の部位のそれより大きく、眼球の水晶体は最も熱に弱いところである。人体がマイクロ波の照射を受け「熱い」とか「痛い」という感覚が起こるのは皮膚の知覚作用に基づくものであるが、皮膚以外の体内諸器官は皮膚に比べて感覚神経が乏しいので、障害が大きくなる可能性があることに注意しなければならない。

 

表6.1.1 人体の許容温度と電力密度

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