四、大切に育てられて
仙台市ほほえみの会 斎藤京子
私はまだこの世に生まれてきていません。母体の中で静かに生まれてくる事だけを、考えて毎日過ごしていました。どのような世界なのだろうか、楽しいところなのだろうか、お父さん、お母さんはやさしい人だろうか、お姉さん、お兄さんはいるのだろうか、毎日、毎日、それだけを考えて順調に大きくなっていきました。
私が母親のお腹の中で6ヶ月になる頃、外界では大変な事が起きていたのです。もともと、裕福ではなかったこの家は、父親が東京に出稼ぎに行き、母親も近くの工場で働き、それで生計を立てていたのです。家族はその他に、3歳の姉と2歳の兄がいました。姉と兄は、母親が仕事から帰って来る時間まで、近くのお寺さんに預けられていました。母親は、毎日、毎日、私がお腹に入っていて、まだ安定期にも入っていない時期で、多分つわりも多少あったはずの身ごもった体で、一生懸命働いてがんばっていたある日の事、東京に出稼ぎに行っていたはずの父親からの仕送りが、ぱたっと届かなくなってしまったのです。