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第6章 地理情報システムを用いた城下町地域の復原的研究

−彦根城下善利組足軽屋敷地区を中心として−

 

生方美菜子

 

6-0 調査の目的と方法

6-0-1 はじめに

近年、地域文化財に焦点をおき、その地域の景観復原を試みるにあたり地理情報システム(GIS: Geographical Information System)の利用がなされてきている。地理情報という視点から景観復原を考えていくと、それらの代表的な資料として、古絵図、紙地図、位置情報がテキストとして含まれた文献史料、航空写真等がある。これらの位置情報を用いることによって、様々な時空間分析が可能となる。

しかし、それらの時空間分析を行っている現状は、手法を試行錯誤する段階であると考える。古絵図の歪み補正や正図化を行われているが、指標となるものは未だできていない。地域文化財の情報を含むものをディジタルデータとして変換し、地理情報システム上で用いていくのがいかに困難であるかをあらわしていると考える。

地理情報システム上で用いられている代表的な要素としては、ベースマップとしてのベクターデータとその背景としてのラスターデータ、そしてデータベースとしてテキストデータのリンクが考えられる。本研究は、それらの要素のより適切な関連づけを、空間情報と時系列情報の両方面から目指し、具体的に単一の地域を対象にし、地域文化財を念頭におき、地理情報システムを用いた景観復原への試みとしたい。

6-0-2 調査の目的

彦根は、彦根城と城下町が揃って残っている。その城下の足軽屋敷地区は立花町・魚屋町とともにその面影を色濃く残す地区のひとつである。彦根市は将来的に足軽組屋敷を残していきたいと考え、また、現在そこに住んでおられる方々からも残していきたいという強い希望が出ている。特に、善利組足軽屋敷では保存会も設立されており、そこから地域の人たちの足軽屋敷への愛着を感じる。

そのさきがけとして、足軽屋敷の景観復原を地理情報システムを用いて試みるのが本研究の目的である。古絵図、文献史料に含まれるテキストデータのデータベース等の情報を地理情報システムのソフトウェア<Auto CAD Map 2000>上にとりこみ、現状と当時の状態を彦根城下・足軽屋敷中心に空間分析する。

6-0-3 調査の方法

本研究においては、GISソフトウェア<Auto CAD Map 2000>を用い、ベースマップとしてのディジタルマップ、背景としての画像データ、テキストデータであるデータベースをとりこむ。基本となる彦根市ディジタルマップの地物にテキストデータであるデータベースをリンクさせ、建物を照合させる。同時に、背景として絵図・航空写真の画像データをレイヤー構造で配置し、現状と当時との比較を行う。

 

6-1 ベースマップ

6-1-1 ベクターデータ

彦根市デジタルマップ 地理情報システム利用という観点からベースマップとして不可欠なのがベクターデータである。その基礎資料として代表的なものが国土地理院発行の数値地図2500である。しかし彦根市近郊はまだ発行されていない。そこで当研究室において紙地図をディジタイザで入力したベクターデータのディジタルマップを作成した。入力に用いた紙地図は、彦根市現状平面図(縮尺1/500)及び都市計画図(縮尺1/2500)である。よって、地物ひとつひとつに座標情報が盛り込まれている。

 

 

 

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