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この間、日本では緩和ケア病棟の急増、オーストラリアでは緩和ケアの専門家育成教育の充実、香港では死別後の遺族ケアプログラムの確立、シンガポールでは在宅と施設内ケアの連携により癌による死亡者の約6割がホスピスケアを受けるようになる等々、各国のホスピス緩和ケアは着実な発展をしてきた。こうした背景を受けて1998年の第4回会議(東京)でネットワークの法人化に向けての委員会が発足し、1999年5月31日、6月1日の2日間にわたり香港で開催された第5回会議では、法人化への具体的な話し合いが行われた。

今回の参加は、上述した8カ国以外に韓国、フィリピン、インド、タイ、ベトナム、そしてアメリカ(特別参加)の14カ国、34名であった。日本からは、当財団日野原重明理事長、大阪大学人間科学部教授であり全国ホスピス緩和ケア病棟連絡協議会会長の柏木哲夫先生、埼玉県県民健康センター常務理事(前埼玉県立がんセンター総長)の武田文和先生のほか、ピースハウスホスピス院長西立野研二、ホスピス教育研究所部長松島たつ子の5名が参加した。

 

ネットワークの法人化に向けて

 

これまで各国代表者の集まりとはいえ、インフォーマルでアットホームな会議であったものが、今回は会の法人化に向けてということで、会の名称、参加国と投票権、法人申請の場所、運営費の分担など、各国の社会経済状況や政治事情が関係するテーマが多く、これまで以上に真剣な討議となった。結局法人化の手続きはシンガポールで行われることになり、事務局はシンガポールの国立がんセンター内に置かれ、事務局長としてDr.Rosalie Shawが選出された。Dr.Shawは、英語教師、看護婦、医師の経歴を持ち、西オーストラリア州のホスピスケアの創始者として活躍され、その後、シンガポールのホスピスケアの発展に指導的にかかわられている方で、事務局長として最もふさわしい方と思われる。Dr. Shawは、今後、事務局の仕事とともに、ホスピス緩和ケアの普及、質の向上のために各国を訪ね、直接指導、教育する役割も担うことになる。こうして会の専属スタッフが選任されたことで、本格的な活動が始まることになった。

会の名称は「アジア太平洋地域ホスピス緩和ケアネットワークThe Asia Pacific Hospice Palliative Care Network (APHN)」と決まり、次のような声明が出された。

「アジア太平洋地域ホスピス緩和ケアネットワークは、この地域のホスピス緩和ケアの発展を推進する。一人ひとりの命の価値とその家族の重要性を認め、進行した病気を持つ人々の痛みを緩和し、苦悩を和らげるための知識と技術を共有する。」

 

 

 

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