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つまりこの夫は支配的で巧みに妻のバウンドリーを侵しているのです。

このような場合には、夫婦の間で支配者と同意者という関係がライフスタイルになってしまっているのです。ですから、容易には2人の間にバウンドリーを確立するのはむずかしいことは間違いありません。このようなケースは、慢性的な病にたとえるとよくわかります。ですから、相当の時間をかけてバウンドリーを確立しないと、相手に対して非常なショックを与えてしまいます。いままで「イエス」とばかり言っていたのを「ノー」と言い始めたら、それも25年間もそのような関係だったのだとしたら、それは無理もありません。

私はよく結婚カウンセリングをしますが、大体の場合、まず妻が来ます。カウンセリングを通してある程度自分というものが確立してくると、夫婦間の力関係が変わってくるのです。そうすると、夫はセラピストに対して嫌悪感をもつことがあります。特にバウンドリーの問題ではそうなる可能性が非常に大です。まず夫との関係で問題だと感じたことから少しずつ実践していくことです。あまりにも巧みな人の場合には、その話術の中に入ってしまい、動きがとれなくなっていることもあります。まさに半分はマインドコントロールされているのです。

そのときに何をしたらよいかというと、バウンドリーがないのですから、はじめは「地理的距離」をとることです。たとえば、夫と話をしていて、「あっ、きたな」と思ったら、「この話はまたあとでしましょう」と言って夫のもとから距離的に離れることです。決してその話術の中に入ってはだめなのです。「あっ、きた」ということがわかるようになるのも、ある程度バウンドリーができてからといえるでしよう。バウンドリーが侵されると思うと警報システムが鳴るわけです。あまり拒否的な態度をとってもいけません。

 

 

 

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