Gはジェネレーションズ(世代)。世代格差を超える配慮が必要。
Nはナビゲーション(航法)。家の内や外での誘導。
次に「アンリミテッド・バイ・デザイン」展の展示順路にしたがってユニバーサルデザインの事例を解説する。
ホームオフィスの展示室では、大きなこととともにディテールにも注目しないとうまく機能しないことを示そうとした。使いやすいボタンやノブ、明快なグラフィクスなどディテールが良いと、ユーザーが製品をコントロールできることを解説している。
キッチンの展示室では、熱湯でグリップが変形するハサミ、ハンドル部分を柔らかくして握りやすくしたピーラーなどだれもが楽に使える道具を展示した。また、天板の高さが調整でき、冷蔵庫やオーブンも使いやすい高さに配置されたキッチンを設置した。ここでは、キッチンが再定義され、器具や道具が再検討されたことがわかる。
バスの展示室では、デザイナーの年老いた両親の意見をもとに、高さの調節機能がついた洗面台やトイレなどが展示された。また、表示部分が測定部分と分離された体重計やポンプタイプの歯磨きディスペンサーなどディテールの工夫によって使いやすくデザインされた事例を展示した。
庭の展示室では、土の表面を高くし、手入れ時の体の負担を少なくした花壇(エイジレス・ガーデン)と高齢者も使いやすいように工夫されたガーデンツールの事例を紹介した。
遊びは、我々の日常生活に重要な活動である。遊びの展示では、全ての人がアクセスできるように機会と可能性を広げた遊び場を制作した。この遊具を開発した会社は急激に成長しており、ユニバーサルデザインは経済的なメリットも大きいことを証明している。
航法の展示室では、視覚障害者施設向けに制作された点字やアイコン、マーク、文字などのグラフィクスや車載のGPSのシステム、音声付きの道路標識など、触れる、聞く、見る、読むという方法で、誘導に関する展示物に接することができるようにした。
ハンドルの展示室には、異なるドアハンドルを12個展示し、問題解決策が複数あるということを示し、ユーザー自身が自分に適合したものを選択すべきだと訴えた。
コンピュータの展示室にある机や椅子は、容易に高さ調節ができ、キーボード、ドキュメントクリップなどの展示物はいずれも使い手の立場で開発されたものだ。3サイズ用意されている椅子は、職場から一切の階層を取り除くという考え方で開発された。
これまでの博物館とは異なり、この展示では展示物に触れることができるようにした。
これらは解決策ではなくはじまりの一歩である。ユニバーサルデザインを広げるため、デザイナー、メーカーの方々の努力をお願いしたい。
アレキサンダー・ベル氏の父親は聾学校を運営していたが、その中でベルは補聴器を開発し、それが地球の裏側の人の声まで聞こえる電話の発明につながった。この発明により我々の生活は大きく変化した。これこそがユニバーサルデザインである。
○パネルディスカッション
パネリスト
中村英男
自治大臣官房地域政策室長
今竹翠
大阪府立産業デザイン研究センター所長
早瀬昇
社会福祉法人大阪ボランティア協会 理事・事務局長
酒井正幸
三菱電機デザイン研究所 インターフェースデザイン部長、(財)家電製品協会バリアフリーワーキンググループ主査
ブルース・ハナ
デザイン・コンサルタント、プラット・インスティテュート工業デザイン学部教授
コーディネーター
脇本祐一
日本経済新聞社大阪本社編集局編集委員