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活力の根源を探ると、フィンランドという国の存在が浮かびあがる。この国の人口は、510万人。北海道より少ない。いいかえれば、フィンランドは、日本なら地方公共団体並の規模である。

第2次大戦の折、ソ連に敗退するや、同盟したドイツといち早く手を切り、ソ連と友好条約を結び、中立を保った。ロシアとの国境は1,300kmにわたるが、ソ連邦には入らず、民主主義と資本主義市場経済を守り抜いた。ソ連との友好関係の手前、西ヨーロッパとの交流はままならず、自力で、復興・発展をとげねばならなかった。こうして東西冷戦構造の狭間にありながら、フィンランドは、独自の努力で、1人当りGDP約25,000ドルという西欧の標準並みの豊かさを実現させた。しかも、最南端のヘルシンキが北緯60度という北に位置し、自然条件が極めてきびしい中においてである。

この豊かさは、トップのリーダーシップと国民の自助努力で実現されたといえよう。

地方公共団体が依存心を持たず、独自に町づくりに励む根源には、国自体の自力での発展という実績があったことが指摘できよう。

日本は規模としては都道府県と大差のない小国フィンランド自体から地方公共団体のあり方について学ぶことが多い。その上で、フィンランドの市町村を参考にすることをおすすめしたい。

フィンランドから帰国した平成10年には、「地方分権推進計画」がたてられ、11年には地方分権一括法が成立し、地方分権が本格化しつつある。平成5年、第3次行革審の委員として、周囲の反対に猛抵抗し、一旦削除されかかった地方分権を再び答申に盛りこんだ身としては、隔世の感がする。

地方分権にむけて微力ながら参加したいと、平成10年末に地方制度調査会の会長をお引き受けした。現在、専門小委員会で、「住民自治制度のあり方」について審議しているが前提として「自己決定・自己責任の原則を踏まえた地方分権時代の」ということばが付されている。自己決定・自己責任の原則は、自力が原則のフィンランドから学ぶことが多いにちがいない。

21世紀は、日本が真の豊かさをめざす時代であり、その実現には生活の場である地域が重視される。地方分権によって魅力と個性のある地域づくりが望まれよう。

 

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新雪と紅葉の谷川岳一ノ倉沢

 

 

 

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