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自治だより 平成11年11月号

(通巻NO.134)

 

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21世紀に向けた地方分権時代の実現を目指して

高原 須美子(地方制度調査会会長)

 

平成10年3月までの約2年半、日本大使としてフィンランドで暮らした間に、地方都市から招かれて、あちこちに足を運んだ。地方分権が進んでいるといわれる北欧の実態をこの目で確かめたかったからである。

ハミナ市は、ヘルシンキの西方、ロシアとの国境まで30数kmのところにある人口1万人の小都市である。まず、市庁舎の一室で、市長から市の概要が説明されたが、壁にヨーロッパとその周辺の大きな地図が掲げられているのに驚かされた。

地図をさし示しながら、説明は、ヨーロッパの中でのフィンランド、さらにはハミナ市の位置づけから始まった。フィンランドはEUの一員であり、ロシア国境に近いハミナ市は、ヨーロッパからロシアへのゲイトウェイ、逆にロシアからヨーロッパへの玄関口にあたるのだ。市は、この地理的条件を活かして発展をはかろうとしており、ヨーロッパからの貨物の荷揚げ、ロシアからの荷物の積み出しのための港は、拡張を続け活況を呈していた。日本からも、大手企業2社が体育館の2倍か3倍の広さの倉庫を確保していた。近年のロシア経済の低迷で、ハミナ市の発展にもくるいが出ているかもしれないが、あの活力でのり切っているにちがいない。

日本の都市で、アジアの地図から説明をはじめるところがあるだろうか。発想のちがいと意気込みの差を痛感させられた。

ヴァーサ、オウル、ミッケリ等、いくつもの都市を巡ったが、どの市も、独自の哲学とヴィジョンを持ち、活力があった。

 

 

 

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