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今後は地方の側が新しく得たチャンスを生かして、どのように住民にとって一番望ましい地方自治を自己決定していくかが課題である」と述べられた。

これをうけて、各パネラーより、今後の分権推進の改革について、議論が進められた。

まず、加戸知事は、「地方分権への第一歩を踏み出したことは大変画期的なことである。今後は住民のニーズに合わせた行政サービスを実施するために、職員の意識改革を図っていかなければならない。さらに、自治体独自の行政を展開していくために、政策立案能力を高める必要がある。また、日頃住民のニーズを最も把握している市町村の自主性、主体性を可能な限り尊重していくことが、県の取るべき態度である」と発言された。

中村市長は、「戦後の復興においては、中央主権体制が必要とされていたが、社会が成熟してきた現在は分権が必要とされる。今後は住民自治をベースとしたまちづくりをしていかなければならない。そのためには、21世紀型行政と職員の意識改革、まちの目指すべき目標の設定、市民参加のプログラムの三要素が必要とされる」と述べられた。

また、矢野氏は「生活に密着した行政を進める上で、中央省庁の締め付け、拘束は大きな障害となっている。しかし、愛媛県は財源の問題でも地方交付税に頼る体質が強く、市町村合併問題でも意識が低い」と指摘された。

山岡氏は、新潟県上越市の副市長制の導入を例に上げ、「上越市において副市長の一般公募をインターネットで実施したが、従来の慣習を変えるということは困難が伴うものである。しかし外部の血を入れるということは変化の大きな足がかりになると思う」と考えを示された。

山川氏は、「財源問題においては、税制等で愛媛県の独自性を出すことにより、企業誘致を行えば税収をのばすことができるのではないか。こうした独自性を出していくためには市民の意識改革が大切である」と発言された。

 

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以上を受けて、コーディネーターの森田氏より、市町村合併、住民参加、自治体職員の意識改革について問題提起され、「個性輝く地域作りには何を変え、自治体はそれに対してどう取り組むべきか」各パネラーに意見が求められた。

加戸知事は、「町づくりについての意識を、住民、自治体職員がともに持たなければならない。財源面で補填がきかない分野については、行政と民間企業と県民とがパートナーシップを築き、ボランティア意識を持つ必要がある。また、長期計画をつくるときに、住民の声を多く反映する必要がある」と述べられた。

中村市長は、「市町村合併の意識は介護保険の導入をきっかけとして、高まっていくと思う。21世紀型行政の確立には職員人事制度の改革、政策の上奏システムの確立、コスト意識の徹底、市民参加が重要である」と考えを示された。

矢野氏は「政策立案能力を高めることは、行政に関わるものとしては一番大切なことだと思う。また、地方議会の機能を見直すこと、行政自らが情報公開を進めていくことが必要である」と述べられ、また、山岡氏は、「中央に向けたPR、広報活動、次代を担う若手の教育が個性輝く地域づくりには必要である」と持論を示された。

さらに、山川氏は、「老人の知恵、経験を活かしたボランティア活動を役立てるべきである」と付け加えられた。

この後、フリーディスカッションに移り、加戸知事は、「地方分権が進んでいき、行政の効率を考えた場合、愛媛県においても市町村合併は避けて通れない」との考えを示された。

中村市長は、「税収を上げるためには外から人に来てもらうことが必要。それには町に特色を一つの分野で持たせることが大切」と強調され、続いて、山岡氏は、「中央に向けたPR活動を行う上でもセールスポイントを持つことは必要」と発言された。

山川氏は、「愛媛であれば、瀬戸内という資源をセールスポイントとしてどう利用するかが重要」であると述べられ、さらに、矢野氏は、「行政自らがPRを積極的にやっていくことが必要」であると述べられた。

最後にコーディネーターの森田氏が「地方分権において、住民の意思決定に際し、行政側が、幾つかの選択肢を提示して、選択の自由、選択の余地を作り出していくということが行政の運営上重要である」とまとめ、パネルディスカッションは終了した。

 

 

 

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