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一般的に人口規模の大きな都市は、税源も豊かな傾向があり、特例市の基準となる人口20万以上の都市について、その歳入構造をみると、歳入に占める地方交付税の割合は、かなり低いものとなっている。一方で、人口20万以上の都市における税収は歳入総額の46.0%を占め、人口20万未満の市町村に比べて法人住民税、都市計画税の割合が高く、事業所税の税収も上がっている。

このように特例市の基準となる人口20万以上の都市においては、地方交付税への依存度が全体として小さく、財政力指数が0.9以上の団体が約3分の2を占めている。これは、地方交付税の基準財政収入額が基準財政需要額の9割以上に達する都市が約3分の2を占めることを意味し、一定の税源充実を図ることによって自立的な財政運営が可能になる団体が人口20万以上の都市には数多く存在すると考えられる。

今後は、中核市、特例市といった制度を活用し、地方団体への権限委譲を積極的に進めていくとともに、自らの税収で自立した財政運営を行える地方団体ができる限り多くなるような税源の充実確保に向けた方策についても検討していく必要があると考えられる。

 

2 課税自主権の尊重

 

(1) 税源移譲による行政の効率化

 

分権型社会においては、住民に身近な行政をできる限り身近な地方公共団体において処理することが基本とされる。そのための財源も、できる限り地方税で賄うことが望ましく、地方分権の進展に伴い、地方団体の財政面における自己決定権と自己責任を拡充していく必要がある。

我が国においては、多くの税目について地方団体が課税自主権を行使して標準税率以外の税率によって課税できることとされており、地方税源を充実強化するとともに、地方団体が独自に税率決定権を行使することで、より効率的な財政運営が可能になると考えられる。しかも、法定外普通税、法定外目的税、超過課税については、地方交付税の基準財政収入額の算定対象とならないことから、税収の増加がそのまま増収につながるため、受益と負担の対応関係がより明確にあらわれることになる。

地方分権推進計画においては、法定外普通税、法定外目的税、標準税率以外の税率による課税について、課税自主権の尊重という観点から改正すべき項目が挙げられており、その概要を紹介するとともに、今後の活用策もあわせて論じていきたい。

 

(2) 法定外普通税

 

地方団体は、地方税法で定められている法定税目のほか、その事情に応じて新たな税目を起こして普通税を課することかできることとされており、現在、法定外普通税として6税目が課されている。

昨年5月の地方分権推進計画を受けて、現行の法定外普通税の許可制度を廃止し国の同意を要する事前協議制とする、事前協議の際の協議事項から税源の所在及び財政需要の有無を除外する、等の制度改正が検討されている。地方団体は法定税目と課税標準が重複せずかつ有力な税源が地域に存在する場合には、住民の理解を得てその財政需要を賄うため法定外普通税を課税していくことが可能であり、今後、地域行政の担い手として環境対策、廃棄物対策、高齢者福祉対策など新しい行政需要に対応した財源を賄うため、法定外普通税の可能はを探っていくこととなろう。

 

(3) 法定外目的税

 

租税体系の中では普通税が原則であり、法定外目的税は現行制度において認められていない。そこで、地方分権推進計画では、法定外目的税について、住民の受益と負担の関係が明確になり、また、課税の選択の幅を広げることにもつながることから、その創設を図るとされたところである。

同計画では、法定外目的税の新設・変更の手続きについて、法定外普通税と同様に国の同意を要する事前協議制とすることとされており、使途の特定以外の規定については、基本的に法定外普通税と同様のものになると考えられる。

また、地域それぞれの行政需要に応えて、受益と負担の対応関係を明確化し、税負担の増加について住民も納得のうえで行政を推進していくために、法定外目的税は有効な手段になると考えられる。

今後、法定外目的税が創設された場合には、課税自主権を拡充する観点からも、各地方団体において積極的にその活用を検討していくことが期待される。

 

(4) 標準税率以外の税率による課税

 

地方税法においては、地方団体のとるべき税率について、標準税率、制限税率及び一定税率の3つの方式を定めるほか、特定の税目については税率を特に定めず、地方団体が任意に定めるものとしている。地方団体は財政上の特別の必要がある場合、すなわち財源が不足する場合は超過課税を行うことができ、また、財源に余裕がある場合は標準税率を下回る税率を定めることができるが、超過課税を行う場合には、その財政上の特別の必要性を十分に検討し、納税者の理解を得ることが重要であると考えられる。

 

 

 

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