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「分権型社会に対応した地方税制のあり方に関する調査研究報告書」の概要

自治省税務局企画課

 

財団法人自治総合センターによる「分権型社会に対応した地方税制のあり方に関する調査研究報告書」が本年3月にまとめられた。この報告書は、同センターに設置された学識経験者、自治省及び地方団体関係者から構成される「分権型社会に対応した地方税制のあり方に関する調査研究委員会」(委員長林健久東京大学名誉教授)によるアンケート調査や実態調査を含めた1年間にわたる総合的な調査研究の成果である。

 

I 報告書の構成

 

第一部 分権型社会に対応した地方税制のあり方について

1 地方税の充実確保

2 課税自主権の尊重

3 国の経済政策と地方税制

4 地方分権に対応した税務執行体制

おわりに

 

第二部 分権型社会に対応した地方税制のあり方に関する調査研究

・「分権型社会の地方税制」(碓井光明委員)

・「地方分権下の不均一固定資産税の転嫁・帰着問題」(西野萬里委員)

・「アメリカの分権型州・地方税制度における多様性の変容」(前田高志委員)

 

第三部 分権型社会に対応した地方税制のあり方に関するアンケート調査結果

 

II 報告書の要旨

 

以下、報告書の第一部について、要旨を述べることとしたい。

 

1 地方税の充実確保

 

地方分権の進展に応じて、地方団体がより自主的・自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方団体の財政基盤を充実強化していくことが重要であり、今後、地方団体の白主財源である地方税の充実確保のための抜本的な解決を図っていくことが必要であると考えられる。

また、地方分権推進計画においては、地方税の充実確保について述べられているほか、「中核市」の要件見直しや「特例市」制度の創設など地方分権の受け皿づくりに向けた改正項目が盛り込まれている。

そこで、これからの分権型社会において権限委譲の受け皿として期待される特例市などの地方団体が自立的な財政運営を行っていくために、どのようにその税源を充実させていくべきかについて考察する。

 

(1) 市町村の役割に対応した税源充実のあり方

 

市町村は、基礎的な地方公共団体であり、地域福祉等の担い手としてこれからの分権型社会において大きな役割を果たしていくと考えられる。地域住民が自ら負担する税金をもって自らの住みよい地域社会を築いていくことは「地方自治」の基本であり、地域における住民の受益と負担の対応関係をより明確化していく必要がある。もちろん、地域間の経済基盤には格差があり、税源が偏在していることから、現実には全ての市町村が地方税のみで所要の財源を充足することは困難であり、地方交付税等の財政調整制度は不可欠である。しかし、地方自治の観点から考えれば、地方財源はできる限り住民が地方団体に対して直接負担する税によって充足することが望ましく、地方税源の充実によって自らの税収による自立した財政運営を行うことができる地方団体を増やしていくことが求められていると考えられる。したがって、税源の充実によっても財源が不足する離島や過疎地域の団体などについては、ナショナルミニマムを確保するためにも引き続き地方交付税制度等を活用して財源保障を行いつつ、一定程度以上の市町村は自立的な財政運営を行えるような方策を考えていく必要があるのではないかと思われる。

 

(2) 税源充実による自立した都市の育成

 

地方自治法においては、市町村について、政令指定都市、中核市が定められているが、地方分権推進計画を受けて特例市制度の創設が検討されている。この特例市制度は、市町村への権限委譲を推進する観点から、行政ニーズが集中し、事務処理に必要とされる専門的知識・技術を備えた組織を整備することが可能と思われる市町村に対し、ある程度の事務をまとめて委譲するための制度として、人口20万以上の市について創設が検討されているものである

 

 

 

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