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七つ星を掲げて元気ある島に

安達敏夫(北海道利尻富士町長)

 

利尻富士町は、日本最北端の稚内市より52kmの海を距てて、日本海の北方洋上に浮かぶ利尻島の東部を占め、秀峰利尻山(1,721m)を中心として西部は利尻町と接し、北西には花の浮島礼文島と10kmの海を挟んで指呼の間にあります。面積は105.65km2、人口4,398人で漁業と観光で活づく町です。

定住者の多くは、明治初期に本州の日本海側より春の錬、夏の昆布に操業するため移住したもので、そのルーツは遠くは鳥取そして福井、石川、富山、秋田、青森の各県、明治13年に鴛泊に利尻郡各村戸長役場が設けられたのが地方自治の始まりで、昭和29年までは鰊と昆布で漁業が殷賑を極めておりました。

しかし、昭和30年以降は海況の変化と乱獲で鰊の群来は無く大凶漁、加えて国内で名を馳せた利尻昆布も対馬暖流の影響を受けて磯焼け現象が起り、年を逐って減産となり、他の魚族資源も減少して島における基幹産業の漁業は衰退の一途を辿りました。これが要因となって急速な過疎化が進行し、往時11,230人を擁していた人口も現在は4,000人台に激減し、将来に大きな不安を抱く事態となったものですが、昭和50年代後半に北海道が提唱する「育てとる漁業」にいち早く転換し、また資源管理型漁業にも積極的に取組み、漁民自らが汗を流した努力が実って資源も復元し、漁業経営も安定化の方向にあり、さらに魅力ある浜づくりに知恵を絞っているところで、人それぞれが思いを入れ人為を尽くせば自然現象にも勝ると考えさせられる昨今であります。

利尻島は、北の海に大きく優しい自然が溢れ、四季折々に醸し出す雄大な美術品は見事な情景で、多くの人々の感動を誘います。それ故に国立公園の指定を受け、わが国でも屈指の自然景勝地として国民の憩いと安らぎの島として名を馳せている所以でありますが、私は敢えて利尻富士町の比類ない七つの星の存在が大きいと自負しております。

 

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千歳−利尻間を50分で結ぶ

 

1. 山 日本最北の海に浮ぶ独立峰別名利尻富士と呼ばれ、絶賛される日本百名山のひとつ

2. 海 エメラルド色に輝き新鮮な魚介類を食卓に提供できる北の幸

3. 森 えぞ松、とど松の深い原生林に包まれて野鳥の爽やかなさえずりがこだまする日本森林浴の森百選の利尻島自然休養林

4. 水 NHKテレビで全国放映された「海に浮ぶ富士、利尻島水の旅」で反響の大きかった日本名水百選の湧水、甘露泉水

5. 花 山裾から頂上まで広く分布する多彩な高山植物の群落

6. 湯 登山道の麓に湧出する天然温泉、利尻富士温泉が旅の疲れを癒す

7. 路 海路は稚内市から52km、最新鋭の3,200t級カーフェリーが3隻体制で就航(1時間40分)空路は平成11年6月1日から千歳―利尻間にジェット機が就航(50分)交通アクセスが充実

本町の2大産業である漁業・観光は、過疎に喘ぎ将来に不安を抱いた時代を克服して今日の発展があるのも、島に住む人々が利尻に熱い思いを入れ「人がまちを変え、まちをつくる」郷土愛に燃え懸命に取組んだからにほかならないと思います。

いま、厳しく先行き不透明な時に直面しておりますが、平成2年に開基110周年を契機に東利尻町から利尻富士町に町名を変更し、町名に恥じない町づくりを果そうとして町民一人ひとりが意識して頑張った経験と恵まれた七つ星を財産として新しい21世紀に向い、さらに夢と誇りを持てる元気あるふるさとの島づくりに努めて参ろうと思います。「われら悠久の秀峰と共にあり、そして翔かん」

 

 

 

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