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(2)既存の都市インフラの新たな活用方策

児童数の減少と阪神・淡路大震災による被害のため、閉校されることとなった北野小学校跡地の利用可能な校舎やグランドについて、体験型工房及びバス専用駐車場として再整備し、神戸の地場産業、観光産業の振興を図っている。

公共施設に新たな機能を付加する場合、あるいは公共施設を別の機能を持つ施設に整備する場合、当初の施設構造が新たな施設整備の障害となる場合が見受けられる。

従って、今後、公共施設を整備していくに当たっては、将来的に幅広い用途に対応できるような施設設計や、華美なものではなく、将来の予期されない使用に耐えうる堅実な施設整備が必要であろう。

今回のような既存施設の再活用のケースでは、上物の建設費用について言えば、新設する方が安く済む可能性もあるので、国としても、既存施設の機能向上や機能の転換に対する支援を拡充すべきであろう。

(3)PFI・民間活力の導入等による新たな公共投資の手法について

大阪市扇町地区の工業研究所跡地及び新世界地区における旧市交通局車庫跡地を活用した公共公益施設の整備に当たって、土地信託方式を活用している。

○ PFl(Private Finance Initiative)について

国・地方公共団体においては、今後、厳しい財政事情の下で、一層効率的な公共事業の推進を求められており、近年、これまで公共が専ら対応していた社会資本整備の分野に、民間セクターのリスク負担の下で、民間の資金、ノウハウの導入を図る新しい手法の一つとして、PFIが注目されるようになってきた。

PFIの理念は、リスクと資金分担を民間に移転するというものであり、基本となる考え方が、「バリュー・フォー・マネー(VFM)」であり、これを行政主体の立場から言うと、行政・民間を問わず、同質のサービスの提供に係る費用の総額を最も安価に提供できる主体に任せるということになろう。

PFI方式を採用すれば、民間とのリスク分担について、事前の検討を行いやすい環境を提供するということである可能性も指摘できる。但し、PFI方式自体がリスク負担に関する合意の形成を促進してくれる訳ではなく、これまで以上に、公共投資に際しての行政のアカウンタビリティーが重要となってくる点にも留意しておく必要がある。

○ PFI方式採用の考え方

PFIは、公共事業のうち、民間事業者でも供給することが可能なサービスであって、事業の成果をある程度数値化することにより、事前の契約によって、事業実施に伴うリスクを明確に分担することができるものが主な対象となることが分かる。つまり、PFI方式はこれらの要件を全て満たしている事業の実施における一つの選択肢であって、実際にPFI方式の採用を検討する際には、対象事業の趣旨や事業の契約化の可能性、更には契約手続き等に係るコストなどを総合的に勘案し、従来の公共事業方式等とよく比較検討を行なった上で、判断すべきである。

PFI方式が我が国で制度化されれば、地方公共団体、特に公共投資に多額の資金を必要とする大都市にとっては喜ばしいことかもしれない。しかしながら、今後、PFI方式による公共施設整備を考える場合には、この方式の採用によって、従来の手法と比べて本当に効率的に整備できたのか、負担が減ったのかなどがチェックできるような仕組みづくりが必要となろう。英国における事例を踏まえれば、事業費が一定以上の規模でないと、PFI方式のメリットが活かされないとの指摘もあるところである。

 

参考

大都市問題調査研究委員会について

・昭和53年度から、日本船舶振興会の研究事業補助金を受けて自治総合センターに設置

・メンバーは、東京都及び各指定都市の企画担当課長並びに自治省地域政策室長及び課長補佐等(昭和54年度から。昭和53年度は自治省及び国土庁の課長又は課長補佐クラスで構成)

・設置目的は、大都市の抱える諸問題の現状と今後の在り方を検討することであり、年度ごとにテーマを選定

・年間の委員会と3〜4回の現地調査を実施(必要に応じて有識者による講演等を実施)し、報告書を作成の上、都道府県、指定都市等に配布

 

(文責:自治大臣官房地域政策室)

 

 

 

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