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平成10年度大都市行政制度に関する調査研究報告書

「大都市における公共投資のあり方〜社会資本整備の新たな手法と活用法策等について〜」の概要

自治大臣官房地域政策室

 

我が国においては、バブル経済の崩壊以降、民間経済の低迷が続いており、国・地方における財政状況は、税収減等により、引き続き危機的状況にあると考えられる。また、社会情勢に目を転ずれば、我が国においては社会の少子・高齢化が世界に類を見ないスピードで進展している。

このような状況の中で、国・地方における公共投資は、これまでよりも、一層、長期的な視野に立った公共投資政策や既存ストックの活用、費用対効果等の観点からの投資の効率化・重点化などが求められる。特に、行政・経済の中心であるとともに、人口が密集し、生産・消費活動の集中している大都市においては、こうした要請への対応は、まさに喫緊の課題であるといえる。

 

○ 大都市における公共投資の現状

近年の人口の都市部への流入状況を見てみると、その増加率は低下してきており、都市部の拡大は沈静化してきているが、都市の中心部においては、人口の減少や、公共・公益施設の郊外立地の進展に加え、バブル経済の崩壊による都市部の市街地における低未利用地や工場跡地等の空閑地が発生しており、大都市部においては、市街地空間の有効利用が喫緊の課題となっている。

(1)新たな社会資本整備の必要性

2020年に全人口の25%程度が65歳以上となる我が国はもちろんのこと、欧米等においても、高齢化問題は大きな社会問題であり、特に、人口が集中する大都市においては、高齢者問題への対応は、まちづくりのあり方を考える上でも最重要の課題となってきている。

(2)都市の再構築

新しい全国総合開発計画においては、大都市空間を修復、更新し、有効に活用する「大都市のリノベーション」が唱われている。経済的な効率が普遍の価値観でなくなり、求められる都市環境も高度化、多様化してきている今日では、地域の個性の発揮に併せて、環境や安全、つまり「心の豊かさ」や「ゆとり」、あるいは「震災に強く」、「誰にとっても暮らしやすい」まちづくりが最大のテーマであろう。

(3)公共投資の実施過程の変革

大都市における公共投資は、その地価が高いこと等から、一般的に事業費が高騰することが多く、今後の大都市における公共投資に当たっては、選択された事業手法が本当に適切なのか、事業の際には、どれだけの費用が必要なのか、また、その事業によって得られる利益は本当に投資に見合ったものなのかということを明らかにしていくことが求められている。これはまさに、バリュー・フォー・マネーの考え方であって、このVFMに基づくPFI手法は、大都市において、一つの選択肢として、意義のあるものであると思われる。

○ 現地調査事例を中心とした検討

(1)少子化・高齢化等長期的展望に基づく新たな社会資本整備

仙台市においては、今後予測される少子・高齢化社会の到来に向け、「ひとにやさしいまちづくり条例」等を制定しており、障害者や高齢者等を含めたすべての人が円滑に利用できるように、建築物、道路、公園等の整備を促進するというものである。

大都市に限らず、施設整備に当たっては、行政としての取組みはもちろんのこと、現場の人たちが問題意識を持って取り組むことが必要であり、まちづくりにおいて、長期的なビジョンを示し、住民にインセンティブを持たせていく役割は引き続き住民に最も身近な行政主体である地方公共団体であろう。事業の展開に当たっては、どこまで行政がやるか、やれるのかを先ず明確にし、その上で、地区住民との協働により、地域に根ざしたきめ細かい施策を進めるべきである。

 

 

 

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