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(3)まちづくりの専門家をアドバイザーとして派遣する、というものである。これらの財政支援やアドバイザーの派遣は、委員会からの申請にもとづいて行われている。本条例は、まちづくりを住民が主体的にすすめようとするとき、条件整備の面でそれに応えるものである。今後、条例を活用した分権型まちづくりが、いっそう発展していくことを期待したい。

ここでは紙幅の関係で二つの条例をみたが、各地のまちづくり条例に共通していることは、これらの試みを行政主導の条件整備や単なる規範として終わらせないために、住民参加を保障し、町内会・自治会などを積極的に位置づけていることである。条例にもとづくまちづくりの計画・実施過程にこれらの地域住民組織を位置づけていることは、条例の効果を高め、地域分権の具体化を促進するものと考える。

地方分権の実質性を高めるためには、いまこそ市町村が、行財政権限の強化を実現するもとで、地域分権を推進する立場にいかに明確に立脚するかということが問われている。そのためには、めざすべき地域イメージに関して、行政と住民(住民組織)との間での共通認識が形成されていくことが必要である。そのうえで、両者による分権型・パートナー型のまちづくりの推進が期待される。

 

コミュニティの発展可能性

 

コミュニティは、分権型行政システムをより地域的に確立するために、生活地(一般に小学校区)のイメージ(たとえば、高齢社会における地域生活条件の充実目標)をつくり、コミュニティの発展方向をうちだして、活動を展開していくことが必要である。そこで、コミュニティの発展方向を確立するための活動のステップ(段階)をあらためて示すと、表2のような流れになるであろう。

コミュニティ活動をすすめるにあたっては、多くの地域の活動がそうであるように、地域の現状を正確に把握することからはじまる。そのうえで、めざすべき地域のイメージや将来像を設定して活動を展開し、主体間の意思疎通のために情報を交流していく回路をもっていくことが重要である。最終段階は、地域像にもとづく活動の到達度の確認である。こうして、地域目標に向って繰り返される住民活動のステップアップが、地域の主体形成を強め、コミュニティの発展可能性を広げていくと考える。

以上のように、多くの地域住民組織は、行政とのパートナー関係を強化しながら、地域分権を担う組織への発展を展望して活動している。地方自治体は、コミュニティ行政の充実でそれに応えていかなければならない。

表2〈活動のステップ(段階)〉

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プロフィール

山崎 丈夫(やまさきたけお)

1943年 福島県生まれ。

愛知学泉大学助教授

地域社会論、地方行財政論専攻

東海自治体問題研究所事務局長・日本福祉大学講師等を経て、

1998年4月愛知学泉大学コミュニティ政策学部助教授就任

愛知県人にやさしいまちづくり推進委員会特別委員

[主要著書]

『地域自治の住民組織論』(単著、自治体研究社)

『町内会・自治会の新展開』(共著、同上)

『町内会・自治会モデル規約』(同上)

『むらおこし・まちづくりの検証』(同上)

『コミュニティ活動入門』(同上)

『地域共同管理の現在』(共著、東信堂)

『現代地方自治法入門』(共著、法律文化社)

『高齢社会のコミュニティ設計と地域自治』(名古屋大学法政論集)169号など

 

 

 

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