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コミュニティ活動の現段階

 

既に述べたように、コミュニティ活動は、活動目的によって、生活充実型の活動と問題解決型の活動に分類することができる。そして、実態的には、コミュニティ組織の運営管理の活動が加わる。これらの活動分類に即して活動テーマを整理したのが表1である。

コミュニティ地区では、表にみるような活動を地道に展開している。その特徴は、活動を持続的に発展させるために、文化・スポーツ部会、福祉部会、防災部会、青少年育成部会、広報部会、計画部会というような専門部会を設置していることである。さらに、地区の文化的・歴史的地域資源や自然環境の活用に視点をあて、その保全・発展を活動のテーマにしている地区が多いことである。

具体的に地区事例をみると、たとえば、愛知県春日井市石尾台コミュニティ地区は、現在、活動の内容を13のメニューとしてまとめている。他の地区でも取り組まれているものもあるが、活動状況を知る手がかりとして、その13のメニューを紹介しておきたい。1]盆踊り大会の開催 2]環境美化(石尾台公園の清掃、犬猫の飼育会議) 3]青少年健全育成(愛のパトロール=約770回実施) 4]体育振興(ウォーキングなど健康増進) 5]小中学校の週5日制への地域協力 6]資源回収、リサイクル 7]災害見舞い義援金募集 8]他地域・団体の視察・交流 9]ごみの減量(ごみ収集体験、ごみの分別作業) 10]コミュニティペーパー『石尾台ニュース』の発行(月1回) 11]家庭教育推進地域活動 12]生活安全(防犯) 13]災害対策(地区自主防災会組織)。石尾台地区では、生活充実型の活動を基礎に問題解決型のコミュニティに発展することをめざして、このような13のメニューにもとづいて持続的に取り組んでいる。とくに、活動の担い手を確保するために、ボランティアの組織に力を入れていることが特徴である。

 

表1 コミュニティ活動の事例(テーマ)

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(愛知県地方課資料および各地の活動事例を参考に作成した)

 

地域分権とコミュニティ

 

以上のように、地域内の土地やそれにもとづく生活諸条件の整備と共同利用・管理が、コミュニティ活動の内容である。そして、これらの活動を通して、地域における市民的公共性のあり方が追求されている。こうして、コミュニティのあり方を追求していくことは、パートナーとしての市町村の行政水準を問うことになり、その権限強化のもとで、住民主体のまちづくりや環境・福祉などの生活条件の整備を行いうる分権体制を、コミュニティからつくりあげていくことを必然的発展方向とする。

群馬県知事の小寺弘之氏は、「小学校を住民の『自治区』に」することで、末端の自治の単位を形成していく方向を提案(『朝日新聞』1999年3月9日付け「論壇」)されている。その概要は、次のようなことである。1]小学校の校区ごとに自治区を設ける。2]自治区は3億円くらいの財源を持つ。3]住民の自治により、近隣社会の日常生活において、住民が必要と判断するさまざまな事業を行う。自治区の事務所は、小学校の空き教室に置き、会議は夜開く。ほとんどの役員は常勤でなく、報酬も実費程度とし、専任の職員は退職公務員を採用する。また、役所から公務員の出向を求めるのも一つの方法である。財源については、行政から一定の財源を移譲し、事業予算とする。そして、その予算を公民館・児童公園・側溝整備など近隣の「ハコモノ」や「公共事業」に使うか、老人福祉・医療・子育て・文化などのために使うか、3億円の範囲で優先すべき事業を住民が選択すればよいという。

 

 

 

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