日本財団 図書館


なお、この情報については参考として、別途、附属書類に表示することも考えられる。

また、見返り資産のない、いわゆる赤字地方債についても当該団体の財政状況を認識する上で重要な情報と考えられることから、負債の部に計上することとした。

退職給与引当金については、地方公共団体の実務においては、通常、退職手当が制度化されていることから、負債科目に計上することとした。退職手当を支給すべき事由が既に発生していること及び財政状況を的確に表示する観点から、要支給額の100%を引当金計上することとした。

なお、退職手当組合*4に加入している地方公共団体については、退職手当の支払債務を負うのは、直接には退職手当組合となることから、加入団体自身の負債科目に計上すべきか議論がなされたが、支給される退職手当の財源は組合構成団体の負担金で賄われていることから、こうした団体についても退職手当要支給額を計上することとした。

債務負担行為に関連しては、PFI等により整備された、見返り財源の無い資産の貸方表示の方法が議論されたが、これについては、見返り財源を「債務負担行為」として負債科目に計上することとした。また、第三セクター等の損失補償等に係る債務負担行為の設定額は、債務が確定したものを除き、いわば偶発債務に相当する参考情報として欄外注記することとし、利子補給等に係る債務負担行為設定額も参考情報として欄外注記することとした。

 

正味資産の部では、次のような検討を行った。

 

まず、部の名称について、バランスシートの利用者がこの部を、企業会計における資本、持分のように誤解しないような名称とすべきとの指摘があり、当研究会では、正味資産の名称を用いることとした。

正味資産科目は、国庫支出金・都道府県支出金と一般財源等に区分して表示することとした。ここで国庫支出金・都道府県支出金とは、資産形成の財源となったものを指しており、財政運営上重要な情報であると考えられる。また、国庫支出金・都道府県支出金は普通建設事業費の区分ごとに耐用年数に合わせて償却することとした。

 

以上の検討のほかに、作成したバランスシートの活用方法について検討した。企業会計の財務指標を参考にした分析手法、行政運営コストの分析等が議論されたが、これらについては、今後、バランスシートの作成事例を積み重ねる中で分析の知見を増すことが必要であると考えられる。先述したとおり、今回検討した作成手法によれば、地方公共団体でのバランスシート作成の取組が容易になると考えられることから、多くの作成事例を検討することを通じて、バランスシート間の比較可能性を向上させるとともに、作成手法の一層の改良・改善を図ることが期待される。

 

なお、地方公共団体と民間企業とではその活動目的、資産の意味等が大きく異なることは先述したところであり、当研究会において検討したバランスシートと民間企業のバランスシートを単純に比較することはできないことに留意しなければならない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION