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これは、経営資源の状況とその経営資源を調達するための財源の状況を明らかにするものであり、企業の合理的な経営管理に役立てようとするものである。資産の評価は原則として、取得原価によることになる。

当研究会では、これらのバランスシートの意義を勘案した結果、専ら第三の考え方に沿ってバランスシートを作成する見解をとることとした。

すなわち、第一の考え方は企業の清算を前提にするものであるが、地方公共団体では清算が予定されていない。また、第二の考え方は期間損益計算を前提にするものであり、営利活動を目的としない地方公共団体の財務活動に馴染まない。これらに対して第三の考え方は、もともと効率的な企業経営を行うために経営者が自らの経営資源等を的確に把握することを目的として提唱されたものであり、税金の効率的な活用が求められる地方公共団体の財務運営に役立つものと考えられるためである。

 

以上の検討に基づき、当研究会としてはバランスシートの作成に当たっては、いわゆる取得原価主義を採用することとした。取得原価は支出の事実に基づくものであり一義的に決められることから、地方公共団体間の比較にも馴染むものと考えられる。

取得原価としては決算統計*2のデータを用いることとした。決算統計のデータは資産形成のために実際に投下された税等の額を示しているからである(データの妥当性)。また、決算統計のデータを用いることにより、原則的に全ての地方公共団体を通じて統一的にデータを把握できること(各地方公共団体間の統一性)、電算処理化された昭和44年度に遡ってデータの操作が比較的容易であること(データ収集の簡易性)等の特長も指摘できる。この手法によることで、小規模な地方公共団体でも比較的容易にバランスシート作成に取り組むことが可能になるものと考えられる。

なお、昭和43年度以前の取得財産は、現在の物価水準からみてその価額が相当に小さく、減価償却を行えば未償却残高は僅少であるものと考えられるが、昭和43年度以前の取得財産についても確実なデータに基づくもので、各地方公共団体が資産計上することが望ましいと判断する場合には、計上することが適当であると考えられる。

 

続いて、バランスシート作成に当たっての基本的な前提条件を整理した。

当研究会においては先行研究の成果を基礎に、近年地方公共団体で作成されているバランスシートも参照しながら検討を進めることとした。また、検討に当たっては、複数の市の協力の下に、決算統計等の資料の制約等を確認することとした。

 

まず、対象とする会計は普通会計*3とした。

公営企業会計では既にバランスシートが作成されているところである。

 

 

 

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