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II 当研究会の検討の概要

 

当研究会では、まず地方公共団体の財務活動の特徴を、特に企業との比較において確認するところから検討に着手した。本来、企業活動に由来するバランスシートを地方公共団体についても意味のあるものとするためには、バランスシートが地方公共団体の財務活動の実情を十分踏まえたものであることが求められると考えたためである。

 

まず活動の目的では、企業が利益の追求を目的としているのに対して、地方公共団体は住民福祉の増進を目的としており、利益の概念を持たない。また、財務活動は、企業が利益を追求するための弾力的な財務活動を認めているのに対し、税金を活動資源とする地方公共団体の財務活動は、予算の議会での議決を通して、議会による統制の下に置かれている(財政民主主義)。

このため地方公共団体の経理では、予算の適正・確実な執行に資する現金主義が採用されている(これに対して、企業は発生主義)。

また、財政状態が悪化した場合には、企業では企業体の解散(清算)もあり得るのに対して、地方公共団体では財政再建の手続に移行し、清算は予定されていない。

 

次に、当研究会では作成しようとするバランスシートの意義について改めて確認した。バランスシートは、企業の財政状態を明らかにするため、一定の時点において当該企業が保有するすべての資産、負債等のストックの状況を総括的に表示した報告書であるが、地方公共団体にバランスシートを導入した場合、当該地方公共団体の財政状況をどのような意味で明らかにすることができるかを予め確認する必要があると考えたためである。また、地方公共団体で作成されるバランスシートは、住民に資産等の状況を明らかにする上でも役立つものであることが望まれる。

 

さて、会計学における解釈も参照すると、いわゆるバランスシートの意義はいくつかに分類することができる。

一つには財産目録の要約表としてのバランスシートがある。

これはバランスシート作成の目的を企業の債務弁済能力の把握に重きを置いた考え方であり、換金価値のあるものを、時価により、資産に計上するものである。

これに対し、バランスシートを期間損益計算の補助手段として用いるために、費用となっていない支出を一覧表にしたバランスシートがある。

さらに第三の分類として、企業内部における資金の源泉と使途を表すバランスシートがある。

 

 

 

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