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・ 契約全期間に対応する出資金および劣後債務の市場価格を反映させた補償金額。その目的は、出資金投資者に事業者の好業績によるメリットを取らせる一方で、業績の不冴えに関わるリスクも負担させることである。

当局は、解約直前のゴーイングコンサーンベースでの市場価格に基づく金額を出資者及び劣後債務提供者に支払う。すなわち、その時点で出資金と劣後債務を市場で自発的な買い手に売却することができる金額を支払う。(その算定は当局のデフォルトが発生せず、出資金と劣後債務は自由に譲渡可能であるとの前提で行う)

市場評価は、将来的に期待されるキャッシュフロー(収入と支出の双方)、契約にもとづくリスク配分、および同様の契約に対する市場の嗜好を反映する。また、解約日に事業者により保持されている資産(現金残高を含む)の価値も考慮に入れる。つまり、解約時にこのような資産が当局に譲渡されない場合は、相当する金額が終了時の支払いから差し引かれるべきである。

・ 契約の全期間に対応する、出資金と劣後債務のベースケース収益を反映する補償金額。この目的は、事業者の実際の業績(予想より良くても悪くても)に関わらず、プロジェクト当初に期待された収益を出資金投資者に支払うことにある。

支払われる補償金額は、出資金と劣後債務に対してすでに支払われた金額(出資金の配当/償還金、劣後債務の元利金など)の支払い時期調整後の金額と合計して、契約締結時に合意されたベースケースにおけるプロジェクト期間内部収益率(IRR)を出資金と劣後債務の提供者に保障する金額となる。出資金若しくは劣後債務について既にベースケースIRRに達している場合、いかなる支払いも行われるべきではない。

・ 契約の残余期間に対応する出資金と劣後債務のベースケースリターンを反映する補償金額。これは、上述の二つのアプローチを融合させたものである。補償金額は、当初ベースケースで見込まれた、出資金と劣後債務のその時点から将来のリターン金額である。

リファイナンスが行われて出資金と劣後債務の金額が減らされている場合は、補償金の2重払いを避けるために注意が必要である。(【14.6 リファイナンス】参照)

 

20.1.3.7 当局は、このような支払いの後に資産がどうなるかを決定すべきである。当局は事業者に対して完全に補償をするので、資産は通常当局に返還されるべきである。資産に相当の残余価値があり、事業者が資産を保有しつづける場合は、異なった方法が適用される。

(適用例は【21.6 解約時の事業者による資産保有】を参照)

適切な契約案文は、以下のとおりである。

 

20.1.3 当局のデフォルトによる補償

 

(a) 20.1.2(当局のデフォルトによる解約)にもとづく契約の終了に際し、当局は事業者に対し、[【21. 中途解約時の支払いの算定と支払い】]にしたがい、以下の(i)、(ii)および(iii)の金額の総計を支払うものとする9

(i) 優先債務優先債務に等しい金額

(ii) 契約の中途解約の直接的結果として発生する事業者の従業員に対する退職手当及びプロジェクト契約に基づく下請け業者への支払い10

以下に挙げる3つの(iii)のうちいずれか。

 

9 このような支払いに対する相殺権については、【21. 補償の算定】を参照のこと。

10 プロジェクト契約上のこのような補償規定はよく吟味する必要がある。

 

 

 

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