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19.2.2 代替用途のない資産は、契約終了時に常に当局に自動的に引き取ってくれるのが当たり前だと考えるべきではないものの、下記事項が当てはまるような場合には、当局が引き取る以外に実際上仕方が無いのもまた事実である。

・ 法律上の制限のために実際的な代替策の選択が妨げられる場合。例えば、民間部門は幹線道路の管理者にはなり得ないため、道路は公共部門の担当局に返還しなくてはならない。

・ 当局が保有していてこそ資産に有効な経済価値があるが、例えば刑務所のように、その資産に現実的な代替用途がない場合。

・ 資産の経済的有効期間資産が終了しており価値はないが、何か別の理由により契約相手の当局に資産返還することが必要な場合。例えば、土地の自由所有権(freehold)1

 

19.2.3 しかしながら、契約上では、契約終了時又は終了直前に当局が取ることの出来るオプションを制限しないようにして当局の利益の保護が図られる必要がある。このオプションは例えば下記のようなものである。

・ 無償で資産の所有権を取得する2

・ サービス提供について再入札を行う。この時、旧事業者が新事業者に無償で資産を提供するうようにする3

・ 資産を除去・廃棄する

 

19.2.4  当局が無償で資産譲渡を受ける場合、事業者が契約上の義務(例えばメンテナンス)を全て果たしていなかったために資産の状態が悪化していた時に(この問題は【22 期間満了及び解約時の検査】にて扱われる)、どの程度当局が事業者に対して補償請求できるようにするべきかを当局は検討しておく必要がある。この点は、資産が有効経済寿命を終えている場合(例えば設備機器が主な資産のプロジェクトの場合など)には必要ないだろうが。

 

19.2.5 資産(官舎など)が所在している土地について、契約期間よりも長い期間の第一順位借地権(headlease)が事業者に対して与えられるプロジェクトもある。そのような場合、当局は契約期間中は事業者から土地のサブリースを受けるのが通常である。それにより、契約期間が終了した後は第一順位借地権の残存期間中、土地をそっくり事業者の手に委ねることができる4

 

1 土地は、その権利自体が非常に大きな残余価値を持つ場合もあるが、他の資産もそうとは限らない。(【19.1.2】及び【19.4 代替用途のある資産(残余資産リスクの移転)】参照のこと)

2 【19.6.1】参照のこと

3 再入札をする時は、常に現在の事業者も再応札できるようにするべきである。

4 このような借地権構造を取ることにより、永続的に土地使用オプション権を持つことを禁じている規則に違反すること無く、当局が事業者から契約延長等により再びサービス提供を受けるというオプションを保持することが可能となる。

 

 

 

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