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本調査研究におけるメガフロート建設費用の積算は、明確に位置づけられた基準のない状況で、唯一の具体的な事例である実証実験施設の実績を活用しながら新しい用途の提案を行っているものであり、その制約のもとでの一つの目安である。従って、与件が変われば、積算費用も変化する可能性がある。すなわち、本調査研究における試算は、詳細な施設の規模・配置を前提としないものとして実施している。そのため、並行して実施されている港湾計画策定調査の中で検討されるより具体的な上部施設の規模・配置のもとで、より詳細なコストの積算を行う必要がある。

 

3 メガフロートの位置づけを明確にするために、市政全体の中における位置づけを明確にする必要がある

メガフロートは、内部空間を活用した複合機能の発揮に強みを有していることから、呉市の総合的なまちづくり方針の中での位置づけが必要である。例えば、本調査研究の中では、港湾機能に加えて防災機能の整備が重要な位置を占めているが、この点に関しては、市の防災セクション参画のもとでメガフロートの存在を前提とした防災拠点など既存施設の配置及び防災計画の見直しなどが行われる必要があろう。

また、メガフロートが実現した場合、世界的にも例のない特徴のある先進的な事業となるが、これを地域のイメージづくりに活かし、アピールしていくための取組が望まれる(都市のCIづくりへの活用)。

 

4 メガフロートの機能をアピールするために、広域の中での位置づけを確立していく必要がある

2で触れたのと同様に、広島県や県域を超えた広域の地域に対する広域防災拠点の整備については、当然のことながらメガフロートの存在が前提として計画されることはなかった。そのため、防災拠点としてのメガフロート建設の有効性をより一層高めるために、移動性(メガフロート本体全部というのではなく、切り離しによって機動的に発災拠点に曳航していくことなど。また、平行して検討されている廃棄物処理デモプラントを機動的に活用しうる移動体として位置づけることも可能である)という最大の強みを活かし広域防災拠点としてこれを利用するための調整・位置づけがなされる必要がある。

 

5 メガフロートを市民生活の中に位置づける仕組みづくりが必要である

災害時に防災拠点としてメガフロートを活用させるに当たっては、平常時から住民がこれを利用できるような地域として活動を進める必要がある。このような人の流れを平常時から作り上げるために、交流広場に人を集めるための仕掛けなど、複合利用を前提とした管理・運営体制の検討を進める必要がある。

 

6 メガフロート建設等の費用負担を出来るだけ軽減するために、産業利用を盛り込むことも検討することが必要である。

第4章において検討したように、当該施設の建設に伴いメガフロートによって実施した場合には港湾使用料によって若干は補填されるにしても、20年以上の期間にわたって、毎年の費用負担が最大14億円(図表4-11のケース1の場合)、埋立てによって実施した場合には最大年間22億円の費用(ケース5の場合)が必要である。この負担は、呉市にとっては小さくなく、その負担を若干でも軽減するために、防災性に優れた空間を供給するかたちでの産業利用……例えば、データ保管のバックヤードとして(ホットシェル、コールドシェルなどというような利用)、携帯電話の基地局としてなど……の需要開拓を行うことも必要であろう。

 

 

 

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