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他方、病院への通院のように利用時間帯にある程度の幅がある場合には、乗合方式ではなく個別輸送方式を選択する方が合理的な場合があろう。また、利用者の密度が高いと思われる地域(例えば、東松山市の健康福祉関連施設の集中立地する3地区など)については、むしろ、拠点施設を結んだコミュニティーバス(三鷹市・栗山町のモデル運行事例を参照)を運行する方が合理的かもしれない。

 

イ 福祉車輌の貸し出し・福祉タクシー券の支給

 

(ア) 検討課題

自治体保有ないし社会福祉協議会保有(または自治体からの貸与)の福祉車輌の利用者への貸し出しサービスについては、1]利用ニーズの拡大への対応、2]運転手の利用者手配の原則の見直し、3]運転中の事故責任への対応、の3点が主な課題である。

福祉タクシー券の発行については、1]利用対象者の「要介護(さらには要支援)高齢者」への拡大の方法、2]サービスに使用する車輌の普通車輌から福祉車輌等へのシフト、の2点について検討する。

 

(イ) 代替・新規システムの検討

福祉車輌の貸し出し、福祉タクシー券の発行のいずれについても、需要の増大圧力に直面しているが、上述のように厚生省が「外出支援サービス事業」の対象範囲を拡大する方向を打ち出しているので、各自治体としては、第1に、地元におけるニーズの優先度を的確に把握して、この補助事業を有効に活用することであろう。

第2に、「福祉車輌の貸し出し」における運転手の利用者手配の原則と事故責任への対応課題に即した代替システムとしては、自治体の車輌貸し出し先を運送専業の民間事業者として運行管理も委ねる、という方式が考えられる。あるいは、福祉車輌購入に対する国庫補助の対象に民間の運送業者が含められるのであれば、福祉車輌を民間事業者の保有として、福祉車輌の「運転機能付き貸し出し」も可能となるかもしれない。この場合は、限りなく「ドア・ツー・ドア型」のSTSサービスに近づくことになる。

第3に、福祉タクシー券の発行については、福祉車輌の利用に優先度を与えるという方法が検討されるべきであろう。これによって、より一層支援を必要とする利用者から順次需要が充足されることになり、公平性とニーズ拡大への対応をある程度両立させることにもなると考えられるからである。

以上に検討した外出支援(移送)サービス・システムについて、そのサービス特性(移送目的、利用者の範囲)とサービス機能別資源活用状況を整理すると、図表4-16のとおりである。なお、システム事例の配列に際しては、輸送モードを「乗合方式」と「個別輸送方式」に大別して示した。

 

 

 

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