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なお、我が国では、NPO法制定によってこれまで任意団体に過ぎなかった団体が法人格を持って契約行為や寄付行為などの当事者となることができるようになるが、逆に、NPO法に基づく団体だけをNPOと考えると、あまりに狭い範囲の認識に陥る危険性がある。例えば、英国などでは我が国のようなNPO法はなく、広義のNPOは通常の商法に基づく有限会社や株式会社として設立され、ただ実質的に利益を出さないように運営されているというケースもある。この場合、赤字経営で利益を計上していない(法人税を収めていない)我が国の多くの中小企業は、解釈上は実質的に既にNPOであるという奇妙なことにもりかねない。英国では、ノン・プロフィットであるかどうかと併せて、福祉や環境など特定の公益分野で活動する団体としてチャリティ団体(我が国の公益法人とは少し領域が異なり、NPO法の領域に近い)の認定を受けることによって、企業の寄付行為などが免税となる。

次に、教育機関と産業団体についても決して高い比率の回答ではないが、他の先進諸国の状況から見ると、もっと重要なパートナーとして考えてもよい。人間、長く続いたライフスタイルを変更することは極めて困難であるが、これからの将来を担う若い市民の教育と連携をとることにより、環境対策を実質的なライフスタイルとして身につけさせることが期待できる。力を入れるべき分野として、教育は極めて重要である。

また、産業団体との連携により、地域の多くの企業に統一的に環境対策の趣旨の徹底を図ったり、業界団体ごとの行動指針を策定する、あるいは財政逼迫のおり、環境対策事業へのスポンサーを依頼するなど、様々な便宜が図られることが期待できる。

さらにこの両者の接点である「産業団体による教育分野への支援」は、英国などで極めて実効性の高い施策として重要視されている。企業としても、教育分野への貢献は、不必要な官民癒着の疑いを持たれにくい分野である。

実効ある環境対策の実施のためには、今後とも、この分野(NPOや各種機関とのパートナーシップ)では、地方自治体にとって大きな「意識変革」が求められることとなるであろう。

 

(4)行財政改革の必要性

官民のパートナーシップによる事業実施は、わが国の厳しい財政状況のもとで民間のヒト、モノ、カネの有効活用を図るために極めて有効な手段である。

ここで、1998年現在の日本の国家経済の概要を見てみる。

1]国家の「家計収支」

・1997年の国家予算:約70兆円

うち税収:約51兆円

国家収入:約54兆円

その他:約3兆円

不足分▲約16兆円(国債等で借金)

 

 

 

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