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3番目は、地方自治体が事務・事業の実施に必要となる財・サービス等を民間企業から購入した時に、財・サービスの移動に伴って発生する配送等の交通行動である。これには、学校等への給食材料等の配達、病院等への器材・薬品の納入等のための交通行動が含まれる。4番目は、地方自治体が住民等へ行政サービスを提供することを民間企業等に委託したことにより、民間企業等がこれを行うために発生させる交通行動である。一部のゴミの回収作業や高齢者への食事の配達や福祉サービスの提供等に伴う交通行動である。そして5番目が、住民が地方自治体の提供するサービスを受けるために役所等を訪れる事によって発生する交通行動である。3番目の交通行動と4番目の交通行動は、地方自治体の事務・事業の実施に伴って発生する民間企業等の交通行動として一括して扱うことも可能であろう。

この5種類の交通行動は、常識的に考えて地方自治体の行う事務・事業に伴って必然的に発生する交通行動と判断できる。しかし環境庁が昨年6月に示した「地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地方公共団体の事務及び事業に係る温室効果ガス総排出量算定方法ガイドラインについて」によれば、

a)他者に委託して行う事務または事業は算定の対象外

b)職員が事務・事業のために運転手を含めて借り上げる場合、バスをチャーターする場合、タクシー、ハイヤーを利用する場合は算定の対象外

c)職員が通勤や出張で自動車等を利用する場合は算定の対象外

としており、これを文面通り受け取れば、上記に示した5種類の交通行動のうち温室効果ガス算定の対象とするのは、1番目の交通行動のみということになる。

2番目の交通行動は、職員ではあるが同時に住民でもあるので、住民の交通行動として、3番目、4番目の交通行動は民間企業等の活動に伴う交通行動として、そして5番目の交通行動は住民が行う交通行動として把握され、それぞれに温室効果ガス排出量削減のための対策が求められているため算定の整合性という面では矛盾はないが、地方自治体と民間企業、住民に同等の温室効果ガス削減対策の実施能力を期待して良いのか、交通行動が派生的であり、交通行動を発生させている活動を考慮することなく、交通行動だけを考慮の対象としたのでは対策を考える上で不充分であることを考えると、地方自治体が2番目から5番目までの交通行動の量を把握し、温室効果ガスの排出量を算出することが容易でないことを考慮しても、なお上記ガイドラインに示された算定対象の交通行動は運輸部門からの温室効果ガスの抑制策を考える場合に狭すぎると言えるのではないだろうか。

そこで、ここではガイドラインに示された対象だけではなく、上記の5つの交通行動について、温室効果ガスの発生量を抑制するために有効と考える対策を考えていくことにする。

 

(3)公用車への燃費計の設置 −1番目の交通行動への対策−

地方自治体の事務・事業を職員が遂行するために発生する交通行動に最も一般的で多く利用されているのは、地方自治体が購入または一定期間連続して借り上げた自動車、いわゆる公用車であろう。勿論、公用車を利用する場合以外にも、バスや地下鉄等の公共交通機関を利用する場合や徒歩や自転車を利用する場合もあり、そうした交通行動が多い地方自治体も存在するであろうが、温室効果ガスの発生量という点では、いずれの地方自治体でも公用車を利用する場合が最も問題の交通行動と考えられる。

 

 

 

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