日本財団 図書館


また先に都市規模要因としてあげた人口規模と人口密度も財政力の高低を反映しているかもしれない。一般的に、人口規模の大きい都市ほど、財政力も高いといえるからである。ただし、1人当たり地方税収と人口および人口密度の間の相関係数はそれほど高くなかったので、ここでは推定上同時に考慮しても問題はないと判断した。

(7) 第2次産業の就業人口比率を含めていないのは、第1次・2次・3次の合計が100%であり、2つの比率が決まれば自動的に残りが決まるためである。つまり、3つの比率を同時に推定式に考慮できないという理由からである。

(8) 首都圏だけを選んだことに特別の根拠はないが、この4つの都県については参考文献にあげてある『高齢者在宅福祉サービスの実態と地域比較』(1995年)が、民間の提供する介護サービスを含めて、自治体による介護関連サービスの内容を詳細に調査している。この調査レポートは、各種介護関連サービスの料金、自治体から家計への補助金額、週当たりサービス頻度等の情報をも含めた、筆者の知る限り、最も包括的かつ網羅的なデータである。当初、このレポートのデータを実証分析に利用できないかと考えていたが、残念ながら今回はそれを利用して分析するところまでは至らなかった。こうした情報が全国レベルで利用可能になれば望ましいが、ここではそれがこの4つの都県を選んだ唯一の理由である。

(9) 事前に取り上げた説明変数間の相関係数を調べたところ、人口密度(DENS)と1世帯当たり家族数(FAMILY)の間、1世帯当たり家族数(FAMILY)・第1次産業就業人口比率(RWORK1)・第3次産業就業人口1比率(RWORK3)の3変数の間、第1次産業就業人口比率(RWORKl)と高齢者人口比率(RPOP65)の間で、とりわけ高い値を示した。説明変数を選択する際には、これら変数が重複しないように適宜考慮した。

(10) ちなみに、予測された高齢者に占める施設入所者比率(ROLD1)、寝たきり老人比率(ROLD2)、要介護痴呆性老人比率(ROLD3)、在宅虚弱老人比率(ROLD4)、高齢者人口比率(RPOP65)の間の相関係数は以下のような数字であった。

(11) 表3〜6のパラメータの下の括弧内の数字はt-値であり、この値が絶対値で1.95以上であれば5%水準で、1.65以上であれば10%水準で有意であるといえる。

(12)各自治体が「老人保健福祉計画」を策定したのは1994年前後であるが、すでに5年ほどが経過して、自治体によっては大きな前提として高齢化率などで見通しのずれが発生しているという指摘がある。つまり仮にこのまま目標値を達成していったとしても、現実がすでにそれとは乖離し始めている可能性がある。

 

参考文献

朝日新聞社『民力』CD-ROM(1989-1997)版。

加藤寛・丸尾直美(編著)『福祉ミックス社会への挑戦:少子・高齢時代を迎えて』中央経済社、1998年。

厚生省大臣官房政策課監修『21世紀福祉ビジョン−少子・高齢社会に向けて−』第一法規、1994年5月。

厚生省高齢者介護対策本部事務局監修『新たな高齢者介護システムの確立について』老人保健福祉審議会中間報告、ぎょうせい、1995年8月。

三田市『三田市老人保健福祉計画』1994年3月。

栃本一三郎『介護保険:福祉の市民化』家の光協会、1997年。

長峯純一「地域福祉と地方分権」『総合政策研究』(関西学院大学)No.2,September 1996,pp.117-123.

長峯純一「公共財としてみた地域福祉・介護サービス」『季刊・社会保障研究』Vo1.33,No.4,Spring 1998,pp.364-373.

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会/東日本支部生活設計研究会『高齢者在宅福祉サービスの実態と地域比較』日本法令、1995年。

Bradford,D.F.,R.A.Malt and W.E.Oates,“The Rising Cost of Local Public Services :Some Evidence and Reflections,”National Tax Journal,vol.22,no.2,June 1969,185-202.

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION