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*光学的拡大

写真の引伸ばし器の方式を応用したもので、縮尺は判りやすい1/10が選ばれた。

光源ランプの熱に耐える透明フイルムの縮尺原図を、暗室装置で10倍に拡大、素材鋼板面に原寸を写し出す。原図は、針先にて白塗装プラスチック版に刻み込んだ縮尺線図を、烏口で精密にトレースして作成されたもので、「ネガ」と呼んだが、正しくは「ネガ: 陰画」ではなく「ポジ: 陽画」の誤りである。

この拡大投影を、マーキン職が手作業で「なぞる」のが「投影マーキン」で、人手を介さず粉体の「トナー」で焼き付けるのが「電子写真マーキン: EPM」である。

EPM: Erectro-Photo Marking の原理は、導電性のある界面活性剤を含んだプライマー塗装の鋼板面に、静電荷を持ったトナー層を吸着させておき、ネガ投影で光が当たって(感光)吸着電荷を失う部分を取り除き、残ったトナーだけを(定着)溶着させるものだった。

EPMは柔軟なシステムであり、長い期間NC切断システムを補完するものとして併存したが、やがてトナーの生産量が採算点を割込み、存続が許されなくなったのである。

 

*倣い切断

縮尺原画の線をポジとしてフォト・センサーで拾い、そのアナログ量を増幅して切断火口を駆動するのが、拡大倣い切断装置である。原理は現尺倣いのアイ・トレーサと同じである。

多くの機種(モノポール、シコマット、ユニグラフ、リモートグラフ…)が開発され、一部は実用に供されたものの、その生命は短かった。事情は夫々にさまざまであったろうが、切断形状の精度の悪さが致命的…と聞いている。

切断後のマーキン線追加のための位置は、切断縁に微小なノッチ: 切欠が入れられる方式が工夫されていた。

 

*NCの登場

数値制御: NCの技術は、工作機械の分野で始まっていた。

NCの概念も「倣い」ではあるが、倣うモデルが、「アナログ」でなく「デジタル」であることである。[図1.1.3 NCの概念]参照。

デジタル・モデルは電子情報であり、アナログ・モデルのような実体を持たない。

また、アナログの指令値は、その倣い位置だけに限られるが、指令値がデジタル:数値なら、今の位置を始点とする終点が判る、つまり先読みできるので、それに相当するパルス:脈電流を送って、サーボ・モーターの回転角までを精密に制御できるのである。

 

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図1.1.3 NCの概念

 

 

 

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