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作業環境もよくない。木型打ちの騒音と塵埃の飛散がある。

空調されたオフィスでのデスクワークとなり「分散執務」ができる数値現図とは、雲泥の差である。分散執務とは、コンピュータさえあれば家庭でもどこでも仕事ができる意味である。このことについては、末尾で詳しく触れたい。

 

*結果の移転、再現

床の現図は、製作用の詳細図や一品図に相当するものであるが、持ち運びできない。

呉での"大和"、長崎での"武蔵"、横須賀での"信濃"のように、全く同型でも建造場所が違えば、現図はそれぞれで描かれた。

現図場が焼失する事故があると、現物計測など再現のため工程に大きな手待ちを生じ、造船所にダメージを与える。

現図作業の結果である型定規は、保管や移動にはかさばり、木やフイルムの型は傷みやすく狂いも出る。

形あるモノではない電子データの数値現図では、通信で送ることができ、バックアップ:保存コピーさえとっておけば、消滅・変質のおそれもない。

 

1.1.2 縮尺現図の開発

現尺現図時代でも、全体線図は縮尺で描かれたことがある。造船所の建造船が、現図床面のサイズを超えて大きくなり、現尺でのフェアリング作業が行なえなかったからである。まず縮尺1/4で構造線図を仕上げ、オフセットを拾い、現尺はブロック単位で描くのである。だが、これは現尺現図の一方便で、縮尺現図とは言えない。

ここでの縮尺現図の登場は、生産量の増大、船型の大型化に伴い、現尺現図では対応が困難になってきたことに由来する。そして、縮尺現図の開発は、作画から数値へ、アナログからデジタルへの過渡期を生み出した。今はもう、そのいずれも残ってはいないが、数値現図の萌芽があるので、その関連を示しておこう。

[図1.1.2 縮尺作図からの現尺マーキン]参照。図の破線枠内は、すでに数値現図の範囲に重なり、二重枠に示す流れが、最後(1997年)まで残った。

 

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図1.1.2 縮尺作図からの現尺マーキン

 

 

 

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