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[11] 地域住民の超音波乳癌検診を効率化するための自動判別システムの研究

 

尾本きよか 自治医科大学附属病院臨床病理部

谷口信行 自治医科大学臨床病理学

伊東紘一 自治医科大学臨床病理学

 

I. はじめに

地域住民を対象にした乳癌の集団検診は、現在視診触診法が主流であり、小さな非触知腫瘍の発見は困難である。一部の地域では超音波検査が併用されており、その影響で受診者が増加する傾向にある。これを対象者全員に施行すると、検査に要する時間と収集される画像データが膨大になることが予想され、現時点では全員を対象にした乳癌検診への導入は難しいと思われる。そこでわれわれは、今後更に普及するであろう超音波乳癌検診のために、大量の画像データを収集したり、医師の読影の負担を軽減するためのコンピュータを利用した良悪性自動判定システムの開発を試みた。腫瘍を超音波画像を用いて三次元的に構築し、良悪性判別のための定量的パラメータを多数提案し、これらの中の有用なパラメータを利用して悪性の確率を求める判定式を作成した。そしてこの判定式の有用性を検証し、この自動判定システムを用いて乳癌検診が効率的に行なえるようになるかを検討した。

 

II. 対象

判定式を作成するまでの過程における対象症例は、自治医科大学附属病院で1997年4月から1998年10月の間に、臨床的及び病理組織学的に証明された乳腺腫瘍61例である。その内訳は良性群が29例(嚢胞8例、線維腺腫21例)で、悪性群は32例(乳頭腺管癌11例、硬癌8例、充実腺管癌4例、浸潤性小葉癌1例、粘液癌1例、悪性リンパ腫1例、細胞診にてclassVであったが未手術又は他院で手術した6例)である。年齢は良性群25〜59歳(平均43歳)、悪性群25〜79歳(平均58歳)、腫瘍最大径は良性群5〜28mm(平均12.6mm)、悪性群7〜48mm(平均18.6mm)である。

一方判定式の検証に用いた症例は、1998年10月から1999年7月の間に、同様にして良悪性が確認された乳腺腫瘍31症例で、良性群18例(嚢胞8例、線維腺腫8例、乳腺症2例)、悪性群13例(乳頭腺管癌5例、硬癌3例、充実腺管癌1例、粘液癌1例、その他3例)である。

 

 

 

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