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正常血圧は24時間平均血圧にて125/80mmHg以下とし、夜間・日中収縮期血圧比が10%未満のものをNon-dipper群(ND群: n=49)、10%以上のものをDipper群(D群: n=25)とした。

B.高血圧患者における無症候性脳梗塞と頸動脈硬化及び頭蓋内動脈硬化との関連

外来通院する明らかな心血管系疾患合併のない高血圧患者101人(平均年齢63才)および正常血圧者(22人)の132名を対象とし、頭部MRI(Tl、T2強調画像)を施行し、無症候性ラクナ梗塞とPeriventricular hyperintensity(PVH)を検討した。さらに、頭蓋内・外脳動脈のMR angiography(MRA)を施行し、頸部MRA(2D-TOF法)にて頸動脈病変の有無を、頭蓋内MRA(3D-TOF法)にて中大脳動脈病変の有無を評価した。なお、病変は25%以上の狭窄を有意狭窄とした。

 

III. 結果

A. 正常血圧患者における血圧日内変動と臓器障害の関連

D群とND群で年齢、危険因子、24時間血圧レベルに差はみられなかった(表1)。心臓超音波検査によるLVMIはND群(118g/m2)でD群(103g/m2)に比べ明らかに大きかった(p< 0.05)。またRWTもND群(0.44)でD群(0.37)に比べ明らかに大きかった(p<0.01)。さらに、ANP、BNPともND群で明らかに高かった(ANP; 14pg/ml vs. 24pg/ml: p<0.05, BNP; 17pg/ml vs. 32pg/ml: p<0.01)。しかし、D群とND群でIMTと微量アルブミン尿については有意差がなかった(表2)。

B. 高血圧患者における無症候性脳梗塞と頸動脈硬化及び頭蓋内動脈硬化との関連

中大脳動脈に病変を認めたのは10人(7.6%)で、頸動脈に病変を認めたのは18人(13.6%)であった。なお、中大脳動脈病変と頸動脈病変の両方を合併していた症例はなかった。中大脳動脈病変がある群はない群に比べ高齢であり(72.9才 vs. 63才: p<0.05)(表3)、また平均ラクナ梗塞数(3.4個 vs. 1.2個: p<0.01)及びPVH高度進行群の頻度も高かった(60% vs. 26%: p<0.05)(図1)。内頸動脈病変をもつ群はない群に比べ高齢である傾向があり(69歳 vs. 63歳: p<0.1)、高血圧治療者が多かったが(61% vs. 34%: p<0.01)(表3)、ラクナ梗塞数に差はなかった(1.5個 vs. 1.4個: N.S.)(図1)。また、ラクナ梗塞の分布部位をみると、中大脳動脈病変をもつ群はない群に比べ、明らかに白質領域のラクナ梗塞の出現頻度が高かった(p<0.05)(図2)。

 

 

 

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