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[8] 地域住民の無拘束自動血圧モニタリング(ABPM)に関する研究

 

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I. はじめに

高血圧は心血管障害や脳血管障害の最も重要な危険因子であるが、携帯型無拘束性血圧測定装置の普及により高血圧患者の診察室以外の血圧情報をえることができるようになった。高血圧患者において、これまで血圧日内変動異常の一型として、夜間血圧下降のみられないnon-dipperが正常の血圧下降を示すDipperと区別され、non-dipperはDipperに比べ、脳、心臓、腎臓のすべての高血圧標的臓器において症候性及び無症候性に臓器障害が進行しており、夜間血圧を含む24時間血圧下降が必要とされる1)。一方で正常血圧者においても、夜間の血圧は低く、早朝から上昇しはじめるが、高血圧患者と同じように夜間の血圧下降がみられなければ臓器障害がすすむかどうかは不明である。そこで、我々は、脳卒中の多発する地域の一般住民において、脳卒中ハイリスクグループである血圧日内変動の異常の頻度を正常血圧群で調査し、その臓器障害を検討した。

近年、MRIといった画像の進歩により無症候性脳梗塞といったあらたな病態が注目されている。無症候性脳梗塞を有した場合、将来、症候性の脳血管障害を生じるリスクは約10倍といわれている2)。無症候性脳梗塞の最も重要な危険因子は年齢と高血圧であるが、最近では食生活の欧米化などにともない、高脂血症や糖尿病が増加し頸動脈のアテローム病変がすすみ、無症候性脳梗塞との関連が重視されている3)。しかし、本邦では従来、欧米と比較し頭蓋外の頸動脈病変よりも頭蓋内動脈病変が進行していると考えられてきた4)。そこで今回、外来に通院する高血圧患者において、頭蓋内・外動脈病変と無症候性脳血管病変との関連を検討した。

 

II. 対象と方法

A. 正常血圧患者における血圧日内変動と臓器障害の関連

脳卒中死亡が全国で最も多い栃木県の人口約700名の一地域住民の40才以上(約500名)を対象に、携帯型無拘束性血圧装置を172人に施行し、臓器障害の評価として、心臓超音波検査により左室心筋重量係数(LVMI)、相対的肥厚(RWT)、頸部超音波検査により内膜・中膜複合体(IMT)、12時間蓄尿検査にて微量アルブミン尿の測定を行い、通常の一般採血検査に加え、心臓ホルモンとしてのANP、BNPを測定した。

 

 

 

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