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[7] 地域別にみた初発鬱血性心不全の原因とその誘因(山間地、沿岸地域、都市部)

 

沼田裕一 熊本赤十字病院循環器科

脇田富雄 公立多良木病院循環器科

辻武志  龍ヶ岳町立上天草総合病院循環器科

水政豊  公立多良木病院循環器科

荒木浩  龍ヶ岳町立上天草総合病院循環器科

緒方康博 熊本赤十字病院循環器科

 

I. はじめに

欧米諸国ではこの25年間にわたって心血管疾患による死亡率の減少が認められている(1、2)。しかし鬱血性心不全は高頻度に認められる心血管疾患の中で唯一罹患頻度が増加している疾患であり、特に高齢者での罹患率の増加が著しい(3)。

鬱血性心不全は死亡率が高く、発症から5年間の死亡率は約50%であり(4)、アメリカ合衆国では鬱血性心不全患者が約200万人存在し、年間約40万人の新規鬱血性心不全患者が発生し(5)、約274000人が死亡すると報告されている(6)。

一方本邦における鬱血性心不全を対象にした基礎心疾患の大規模な研究は少ない(7)。鬱血性心不全の基礎心疾患の頻度を明らかにすることは、鬱血性心不全の発症抑制あるいは予防、治療などの対策をたてるために必要である。欝血性心不全の基礎心疾患のなかには、先天性心臓病のように出生率によって一定の比率をとるもの、リューマチ性弁膜症のように減少しているもの、虚血性心疾患のように食生活などのライフスタイルで変化するもの等、時代や地域によってその発生頻度が異なるものがある。

今研究では、現状の異なる地域における、欝血性心不全の原因を探るために、熊本県における生活様式が異なっていると考えられる3つの地域での初発鬱血性心不全患者の基礎心疾患を調査する。調査方法はhospital-based practiceでおこなう。地域別での初発鬱血性心不全患者の発生率を調査するにはcommunity based dataを用いるのが望ましい。確かにhospital based dataはcommunity based dataに比較して、対象が病院受診者に限られるというバイアスが混入するが、欝血性心不全のような重症疾患では、患者が診療所単独で診療を受けることは少なく、欝血性心不全を発症した患者の大半が比較的大きな病院に入院すると考えられる。

 

 

 

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