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[5] へき地診療所の外来患者への薬剤情報提供についての研究

 

吉野達規、須藤俊明、五月女浩史、柳沢奏子、山崎晶司:自治医科大学附属病院薬剤部

奥野正孝:神島診療所

小林英司、藤村昭夫:自治医科大学臨床薬理学

 

I. はじめに

近年、健康保険財政の悪化による薬価の引き下げ、薬害防止を目的とした医薬品適正使用の推進等を背景に、国立病院・大学病院などの中規模以上の医療施設のみならず、開業医においても院外処方箋の発行(医薬分業)が推進され、増加している。また、薬剤師法の改正(平成8年)により患者への医薬品適正使用情報の提供が義務化され、薬剤師の責任範囲は拡大されている。

この様な環境の変化により、薬剤師の業務は「薬の調合」のみならず薬歴管理・服薬指導などの情報提供にも大きな広がりを見せている。また、多くの調査から薬についての様々な情報を薬剤師から得たいとする患者も多い。

しかし、へき地診療所に薬剤師が勤務するケースはきわめて例外的である。また山間部や離島などの、へき地診療所が院外処方箋を発行し受診した患者が調剤薬局から薬を交付されるということも一般的ではないと考えられる。以上の理由から、へき地在住の患者が、薬剤師による薬についての情報提供や相談窓口などのサービスを希望した場合に診療所内はもとよりその地域内に対応できる薬局を見いだすことは不可能に近いと考えられる。

そこで我々は、自治医科大学附属病院薬剤部内に「お薬相談室」を設置し、へき地診療所に外来通院中の患者が薬についての疑問を生じた場合に通信手段(主に郵便)を利用し、患者が自由に薬剤師に質問できるシステムの試行をへき診療所に提案した。また、このシステムの試行を行った結果、薬剤師の居ない地域で患者がいかなる医薬情報を希望しているのか、また好ましい情報提供の方法などについての検討を行い、さらに、現時点では医薬分業の実現が困難であり日常的に薬剤師と接する機会の無い、へき地在住の患者に薬剤師が遠隔地から医薬情報を提供することにより、へき地在住の患者にあっても都市部の患者と同様の高度な医療サービスを受けられ、より満足度の高い治療を受けることが可能となるための方策、および今回の試行の問題点を検討する事を目的とした。

 

II. 方法

情報提供を実施する施設は全国の自治医科大学卒業生の勤務するへき地診療所とした。

 

 

 

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