[3] 在日日系ブラジル人のメンタルヘルス調査
加藤敏 自治医科大学精神医学
大塚公一郎 自治医科大学精神医学
辻恵介 自治医科大学精神医学
本田暁 自治医科大学精神医学
山家邦章 自治医科大学精神医学
中村好一 自治医科大学保健科学講座
阿部裕 順天堂大学スポーツ健康科学部
I. はじめに
バブル経済期の1990年6月に入管法が改正されて、日系ラテンアメリカ出稼ぎ労働者は、合法的に日本での単純労働が可能となった。その影響下でラテンアメリカ労働者は急増し、バブル崩壊後も彼らの数は漸増し、今日では約30万人を数えている(その大半は、日系ブラジル人で全国で約20万人とされる)。彼らは主に関東と中京地区の工業団地に住み、一種の地域共同体を形成している地域もある。
しかし、地域医療の視点から見ると、言語や異文化の問題から、適応障害を起こしたり、精神障害の事例化をきたし、精神医療的ケアを求めている人たちが多く見受けられる。こうした人たちの支援をめざして、われわれは、1997年に日系ラテンアメリカ出稼ぎ労働者の大半を占める日系ブラジル人のメンタルヘルスの実態を調査し、メンタルヘルスと関連があると思われる幾つかの社会的因子を明らかにした8)。その際、日本における文化受容とメンタルヘルスとの関連の解明が課題として残された。そこで、今回われわれは、栃木県宇都宮市に住む日系ブラジル人に対し、WHOにより開発された質問票を用い、抑うつ状態のスクリーニングを行うともに、独自に作成した文化受容質問票を施行し、メンタルヘルスと異文化間葛藤との関係を調べた。