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[1]在宅ケアにおける介護者の負担度と主観的幸福感に関する研究

 

川本龍一 町立野村病院内科

土井貴明 町立野村病院内科

小西一郎 町立野村病院内科

梶井英治 自治医科大学地域医療学

 

I. はじめに

近年、我が国においては急速な高齢化による老人人口、特に後期高齢者が著しく増加した結果、長期臥床患者や独居老人が激増してきた1)。その対策として平成12年4月からは介護保険の導入が計画され、現在、在宅ケアの必要性が急速に高まっている2)。わが町でも保健福祉センターおよび当院を中心として保健・医療・福祉面での在宅支援を展開しつつある。こうした中、在宅ケアにおける患者(以下被介護者)に関する把握は従来よりなされているが、それを看る介護者の健康や背景要因を検討した報告は余りみられない3)〜5)。高齢者死亡に関する「人口動態社会経済調査」(1995年)では、寝たきり患者の介護者は「同居家族」が66.8%であり、3割強で仕事との両立困難をあげている。核家族化や少子化6)7)、女性の社会進出7)、介護者自身の高齢化(老・老介護)8)が進む状況下、介護者の負担をいかに軽減し、QOL(Quolity of life)を向上できるかも在宅ケアを進めていく上で重要な問題と考えられる。

そこで、これまでの活動を継続しながらより効果的な在宅ケアの支援方法、すなわち、介護者が幸福な気持ちを持ちつつ介護にあたれるための支援方法を明らかにするために、まずは、疫学調査として平成10年度から始まった65歳以上を対象とした健康調査(ことぶき調査)9)10)に合わせて平成11年7月から12月までに老・老介護に関する実態調査を行い、さらに当院で訪問診療・看護を実施している介護者を対象に介護負担度と主観的幸福感を調査し、各々影響因子について検討した。

 

II. 方法

A. 疫学調査

1. 対象と方法

野村町は、愛媛県西南部の山間地域に位置し、農林業を主産業とする人口11,561人(1999年7月現在)、うち65歳以上は3,432人(29.7%)(65-74歳:高齢前期1,983人(17.2%)、75-84歳:高齢後期1,119人(9.7%)、85歳以上:超高齢期330人(2.9%))の町である。

 

 

 

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