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付録2 円錐貫入試験における篩い分けの必要性

 

A.2.1 研究の概要

試料を抽出せずにニッケル鉱のパイルに登って荷崩れ危険性に関する評価試験を実施することが可能であれば、試料抽出の問題を回避できるという利点が期待できる。そのため、平成9年度〜10年度にかけて、ニッケル鉱のパイルに登って円錐貫入試験を実施する方法について模索した。その結果として、試験法においては、試料の篩い分けが必要であるとの結論に達した。

揚荷役現場試験のため各社を訪問した結果、貨物全体の性質を代表させるための試料の抽出方法については、荷送り人及び荷受け人が多くの知見を有することが分かった。これによって、試料抽出の問題は皆無ではないが、開発したニッケル鉱荷崩れ危険性評価試験法の価値を損なうものでは無いとの認識に達した。

 

A.2.2 篩い分けの必要性の判断

(1) 判断方法

何トンものニッケル鉱のパイル上での円錐貫入試験により荷崩れの危険性を評価することは、大量の貨物を試料とする実験による評価に相当するため、代表試料の抽出の問題を回避できる意味で利点を有する。一方、ニッケル鉱荷崩れ危険性評価試験法は、粒径分布その他の鉱石の性状によらずに適用できる必要がある。よって、ニッケル鉱のパイル上での円錐貫入試験を荷崩れ危険性評価試験法として採用できるか否かは、複数回の円錐貫入試験により得られる最大円錐貫入力のデータを適当に処理することにより、即ち、代表円錐貫入力を適切に定義することにより、試料によらない代表円錐貫入力のクライテリアを設定できるか否かによると言える。そのため、揚荷役現場における試験においては、数トンの試料(ニッケル鉱)を用意し、その水分値を調製しつつ、試料のパイル上で繰り返し円錐貫入試験を実施した。

基本的には、これら円錐貫入試験結果に基づき、一面剪断試験並びに荷崩れ数値解析及び水分値換算の結果求められる当該試料に対する水分値の上限に対応する代表値(代表円錐貫入力)を求め、代表円錐貫入力が試料によるか否かを判断すれば良い。しかし、揚荷役現場の試験においては、準備されたBoakaine鉱の試料の水分値が高かったため、水分値の上限に対応するデータが得られなかった。そのため、揚荷役現場において最大粒径を19 mmに調製した試料を作成し、容器を用いずに試料を塊にして供試体を形成し円錐貫入試験を実施した結果と、篩い分けを行わずに試料のパイル上で実施した円錐貫入試験の関係に基づき、篩い分けの必要性を判断した。

その結果、試料により、篩い分けを行わない場合と行った場合の最大円錐貫入力の代表値の関係が異なることが分かり、篩い分けが必要と判断した。その内容を以下にまとめる。なお、平成9年度に実施した揚荷役現場における円錐貫入試験においては、試料の締め固めが定量化されていなかったため、鉱石による最大円錐貫入力のデータの差異が、締め固め方法の違いに起因している恐れがあり、鉱石の性状によるものか否かが結論できないという問題があった。そのため、平成10年度には、締め固めを定量化して、Pomalaa鉱及びBoakaine鉱について揚荷役現場における円錐貫入試験を実施した。以下、平成10年度の試験結果を中心に報告する。

 

 

 

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