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第4章 1970年代にはじまる現代日本の食と衣のグローバル化現象について

青木 保

 

はじめに

 

現代日本の食文化food cultureとファッションにおけるグローバル化の特徴について記す。

第二次大戦後の日本は、1955年を境として経済成長期に入った。しかし、その成果が一般の日本人の生活文化の中にある種の豊かさとなって現れてくるのは1970年代に入ってからである。70年代にはじまる日本の食文化の変化は、「ファーストフード化」と呼んで差し支えないと思う。以下、70年代に展開した「ファーストフード化」について簡単に記してみたい。

 

1. 「安い、早い、うまい」

 

現在、日本人の大衆的な食生活を支配する三要素として「安い、早い、うまい」が指摘されているが1いわゆる「ファーストフード化」はその実現である。1970年代に入ると、外食産業がいっせいに営業を始める。前年の69年に飲食業100%オープンの第二次資本自由化が実施されたことが外食産業の日本進出を容易にした。70年代は「外食産業元年」と位置付けられている。

外食産業中心のファーストフード店のオープンは、まず70年の大阪万博にケンタッキーフライドチキン(KFC)とロイヤルが出店したことにはじまる。KFCは同年名古屋に第一号店をオープンさせる。東食ウィンパーも開店した。

71年にはミスタードーナツが4月に大阪に第一号店、日本マクドナルドが7月に銀座三越に第一号店、9月にダンキンドーナツが同じく銀座に開店した。72年3月にモスバーガー第一号店を東京・成増にオープン。73年に日本デイリークィーン、日本ピザハット、日本シェイキーズ、74年にビーアールジャパン(サーティーワンアイスクリーム)などがオープンした。70年から80年にかけて日本には外国系の簡易飲食店がラッシュのごとく出現した。飲食業におけるその影響は大きく、従来の日本的な蕎麦屋や寿司屋といった家族的経営の飲食業から、共通マニュアルによる一括的製造によるフランチャイズ式システム的企業へと業態を変化させたと言われている。さらにそれらの新しい形式の飲食空間ではセルフサービスが要求された。セルフサービスは新しい形の飲食形式である。従来は大学食堂や職員食堂などでは行われていても、普通の飲食店やレストランでは一般に行われていなかった。

 

2. 1970年代にはじまる

 

家庭の外で気楽に食べる外食行為は、もとより以前からあったとはいえ、飛躍的に盛んになるのは70年代に入ってからである。外食産業売上のベスト10企業の推移を見ると、70年―75年までは簡易型であるとはいえ、ベスト10を占めるのはファーストフード型ではない、従来型(レストランや食堂の形式で向かい合ってのテーブルで従業員のサービスによって配られた食品(料理)を食べる)の飲食業である。不二家、日本食堂、養老乃滝、ニュートーキョー、レストラン西武などが上位を占めている。

 

 

 

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